本当に待っていました。 これといった事件もなく、淡々と過ごす老人の日常を演技を超えた演技といってもいいくらい 見事に表現したB・デイヴィスとL・ギッシュの演技は凄いの一言に尽きると思います。 最近の派手さが目立つ映画が多い中、人生の黄昏での中でも生きる強さを教えられる感じがし、 心が癒される感じです。 大病を患った後でも気難しい役を自然に演じたB・デイヴィスには衰えぬ威厳を感じました。 最後にこの静かなテーマ曲も大好きです。
映画「バベットの晩餐会」に触発されて読んだ作品です。
ところが、驚いたことに、この作品が短編であり、非常に簡潔に書かれていることです。
しかし、その短い文章に奥深い情景がものの見事に描き出されます。
まさに、作家の「力」でしょう。
この本は、デンマーク語版(カレン・ブリクセン名義)からの翻訳だそうで、英語版(イサク・ディーネセン名義)とは、後半の文章の量が相当違うと言うことです。
確かに、前半の淡々とした短い文章に比べ、後半一気に描写が詳細となり、クライマックスの話の盛り上がりは相当なものです。
その意味では、デンマーク語版こそが作品の完成形であり、バベットの「芸術としての」晩餐会が、食卓についた人々を幸せの極致に至らしめた最高の表現なのでしょう。
一緒に収められている「エーレンガート」は、国家の存亡の危機にあって、「女傑」とも言える侍女エーレンガートが、最高の機知を発揮する物語です。
こちらも映像が目に浮かぶような素晴らしい文章なのですが、残念ながら私の北方神話やギリシア・ローマ神話などに対する知識が覚束なく、作者の意図を十分に汲み止められなかった恨みがあります。
この本を読んで、更にこの作者の作品が読みたくて堪らなくなりました。
まずこのソフトの画質であるが「HDニューマスター」と謳ってあるものの特別美しいというほどでもない。製作年度を考えるともう少し綺麗になりそうな気もする。(旧盤とは較べていないのでどの程度向上しているのかわからないが) 但し、この画質に不満は感じない。しっとりと美しい画面だと思う。むしろ、あまりクリアな画質にするとこの映画には合わないだろう。 19世紀ヨーロッパの寒村を見事に表現した古い絵画のような渋い美しい色味である。派手さはない。
そして内容においても派手な演出はない。すべてにおいて控えめな映画だ。豪華なのは料理の内容のみ。それも(おそらくは)一度限りの贅沢なのである。だが、その一度の晩餐会に彼らの人生の輝きが投影され解れていく過程は味わい深い。そこが見所だろう。(もちろん、料理も見所だが)
私は初め、主人公が素晴らしい料理を作ったにも拘らず村人からほとんど賞賛されることもなく終わってしまうことが不満であった。(将軍やラスト直前の姉妹は料理を賞賛するが)だが、再見してみるとまた違った印象を受けた。食事を取りながらすこしづつ(本当にすこしづつ)村人の表情が変わってく…。(人物の表情を丹念に見ていくと味わいが増す)
食事は人生の裏方の一つに過ぎない。ちょうど主人公が厨房から一度も顔を出さないように。だが、この映画では素晴らしい料理の一つ一つが人生の賛歌にまで昇華していく…。そして幸せな大人(というか老年期)のおとぎ噺として実を結ぶラスト。星空の下、村人達が手を繋いで歌うシーンの幻想的な美しさ…!。そして…裏方に徹した主人公もまた自らの人生について厨房で語るのである。
すべてにおいて地味な映画である。派手なシーンも演出も(海辺の小さな寒村のように)何もない。 …だが、静かに暖かい映画である。
このソフトには40ページの解説が封入されている。映画だけではわかりにくいカトリックとプロテスタントに関する指摘や監督インタヴューが含まれ、作品の理解や解釈を深めることに役立つ。
|