この演奏者のものは初めて聴いたのですが、これはなかなかいいです。 愛情あふれる表現で、女性的だが、決して弱弱しくはない。 力強さ、厳しさ、孤高さとは無縁だが、選曲から考えてマイナスではない。 一音一音が明晰なタッチで、これはこの演奏者の優れた技術の賜物。 テレビ露出度が高く、なかばタレント化しているような演奏者とはレベルが違う。 録音も良く、へたなSACD盤よりもいいと感じました。
全天88の星座から16の星座を取り上げ、四曲ごとのまとまりで構成された作品。一曲が40秒から、長いものでも3分とかからない小品集。星座名にもなっている動物たちが、「星のうた」1〜4を境にちりばめられ、キラリと光り輝いています。吉松 隆のピアノ曲の名品、ふたつの『プレイアデス舞曲集』(田部京子のピアノ)に通じる趣がありますね。
全部で二十の曲のなかでは、天の川のように作品全体の架け橋となっている「星のうた」1〜4と、ちょこまかした素早い動きの「かに」、きらきらしい「うお」、白いつばさで天翔る「はくちょう」の七曲が魅力的。夜空に広がる星座のファンタジーいうのを感じました。
綺麗な鉱石を思わせるピアノの小品を、素直な、美しいタッチで弾いた仲道郁代(なかみち いくよ)の演奏も素敵ですね。好感の持てるものでした。1997年6月9〜13日にかけて、福島県棚倉町文化センター「倉美館(くらびかん)」での録音。
ひとつ残念だったのは、CDジャケット・カバーの写真が作品にふさわしいものでなかったこと。小さな子どもの手にお母さんが手を添えて、ピアノの鍵盤に導いている写真がカバー中央に置かれているのですが、このピアノ小品集の曲想とは全くかけ離れた、センスのないものだと思ったなあ。作品、演奏とも期待を上回る出来映えだっただけに、このジャケットカバーは、本当に惜しい。★ひとつ減らさせていただきました。
「当時のピアノの復元楽器を使って、楽譜の指示通りにこの楽章を弾いてみると、和音の濁りが微妙に変化し、不思議な音響効果が生まれました。ベートーヴェンのペダルに関する奇妙な指示を難聴のせいにする人もいますが、逆に耳が聞こえにくいからこそ、楽器の響きや倍音に敏感だったのかもしれないと思います。後期になればなるほど、精密になっていくペダル指示は、響きへのあくなき探求を物語っています」。
ベートーヴェンがのこした32のピアノソナタのうち8曲と「エリーゼのために」を取り上げ、それぞれの曲が作られた背景と共に、鮮やかにポイントを色分けした譜面の分析とCD演奏を照らし合わせながら作品の解説を行っている本。複数の執筆者で分担して書かれている。オールカラー。写真やイラストが多く含まれている。
スコアの解説はかなりわかりやすい。一方、CDは美人ピアニスト仲道郁代の全集からのもの。演奏は見事なのだが、残念ながら全て楽章ごとの抜き出しであるため楽曲解説の範囲が部分的にしかカバーされていない。結局他の奏者の全曲集を代わりに使った。
「ベートーヴェンは私にとって、音楽という広い宇宙の核」と言う仲道郁代が、当時のピアノのレプリカを使った演奏体験やピアニストの視点からのコメントを述べている部分も有意義だった。冒頭の引用はその一部。ベートーヴェンが作曲で使用したピアノは主に以下の4種類と考えられ写真付きで紹介されている。時代とともに広がったオクターブやダンパー・ペダルなどの構造の違いがこの作曲家の仕事に与えた影響についても言及されている。 ・シュタイン、ヴァルター(5オクターブ) ・エラール(5オクターブ半) ・ブロードウッド(6オクターブ) ・シュトライヒャー、グラフ(6オクターブ半)
後半ではこの巨匠の人生を紹介している。この部分は比較的月並みな内容ではあるけれど、いろいろな人物の肖像画写真や当時の資料がたくさん載っている点が良かった。
すごくいい意味で脱個性な、手本になる演奏にも思えます。アシュケナージ、ワイゼンベルグ、ピリスなど魅力的なんですが、時折見せる強烈な個性のため、聞いているととても自分では弾けないと諦めていた曲も、仲道さんの演奏を聴いていると、「こうやって弾くの」って教えてくれている気がします。 それだけ素直に聴きやすいってことでしょうか・・・
何度も繰り返し聴いていますが飽きません。 ただ、全体的に少しゆっくり目でしょうか?あと、夜想曲9番で見せる、右手と左手の音の頭を少し意図的にずらして鳴らしているんですが、少々気になります。 このCDでは、6・7・10・11・12・15・17・18・21番が収録されていないのですが、是非聴いてみたいです。
近年、ショパンの活躍した時代のピアノを演奏したり、 ピアノやショパンに関する書籍を出版したり ただ、現代のピアノを演奏するのみならず、色々な アプローチを試みている仲道さんですが、 ここではそういった研究の成果を踏まえた新鮮な アプローチが光る、とても好感のもてる一枚です。
有名な練習曲「革命」において、大袈裟にがなりたてる のではなく、ショパンの心情のひだのようなものを 感じさせる思索的な演奏を行っているので、 ドラマチックな演奏を期待しているリスナーのひとは 肩透かしをくらうのでは? とにかく、オーバーであざとい表現を避けているし、 当時のフォルテピアノ(ショパンやリストの時代でも) が「いかに弱音を美しく響かせるかに重点を置いて設計 されていたのであろう。」ということがよく分かる演奏 になっている点が非常に興味深かったです。
最近、話題のアリス・沙良・オットさんもいかに弱音を 美しく響かせるかに重点をおいたワルツ演奏を録音して いるので、そちらもあわせてお聴きいただくとよいと思います。 ショパン:ワルツ集
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