カヴァティーナ_CAVATINA＿Deer Hunter ディア・ハンターモバイル

カヴァティーナ_CAVATINA＿Deer Hunter

ディア・ハンターデジタル・ニューマスター版 [DVD]

一昔前、なかなか購入できなかった本作が毎年再発売されるのは実に喜ばしい、　バージョン違いの問題もいずれ解決されるでしょう、

ブルース・スプリングスティーンを聞いていたら本作を思い出した、私的には本作・ランボー１、そして「ﾎﾞｰﾝ･ｲﾝ･ｻﾞ･U.S.A.」をベトナム戦争後遺症三部作と勝手に名付けて楽しんでいる、　いったい誰が聞くのか？誰が見るのか？と誰もが感じるマイナーな作品にベトナム戦争を象徴させて満足するより大メジャー作品に象徴させたほうが何事も見通しがよいのである、本作の主人公たちこそ「ﾎﾞｰﾝ･ｲﾝ･ｻﾞ･U.S.A.」で歌われた主人公なのだから、

ロシアン･ルーレットばかりが語られがちな本作は正当な青春映画の大傑作である、青春映画の視点を外して鑑賞するからベトナム戦争従軍兵士たちへの敬意も鎮魂も語れないことになってしまうわけだ、　

そこでずっと気になっていたラスト･シーンについて書いてみる、　

クリストファー・ウォーケンの葬儀後、集まった仲間たちは誰からというわけでもなく「ゴッド･ブレス･アメリカ」を歌いだして本作は終了する、　なぜ「ゴッド･ブレス･アメリカ」なのだろう？

曲名から察することができるように歌われる内容は「神の栄光に祝福されたアメリカ」讃歌である、　すると本作は冒頭からずっと宗教色が強いことに気付く、　ロシア正教の大きな寺院、　ロシア正教に祝福された結婚式と出征の祝い、そしてどこかしら神威を感じる鹿狩りシーン、　

マイケル・チミノにどれほどの自覚があっての脚本なのかは疑問もあるのだが神に祝福された国であるアメリカの「自由」を守るためにベトナム戦争という敵が「無神論者」である戦争、つまり北ベトナム「共産党」と戦った青年たちに敬意をはらい戦死者を弔うには"God Bless America"ほど相応しい歌はないということになる、　ちなみ「ゴッド・ブレス・アメリカ」の作者はロシア移民なのである、

アメリカでは事実上の第二の国家として愛唱されているのだが「ゴッド･ブレス･アメリカ」の特徴はこの曲への反発から作られたウッディ･ガスリーの「わが祖国　This Land Is Your Land」と対比することでより明確になる、　共産党シンパだったウッディ･ガスリーは神に祝福されたアメリカを呪うために「この土地は俺のものだしお前のものだ」と明確すぎるほどに個人の土地所有権を否定してしまう、　やはり共産党シンパだったジョン･レノンが「イマジン」で所有権否定を歌ったことを思い出させるがこの点はいずれWガスリーのCDで詳しく批判する予定、

本作で何かと話題になりすぎるロシアン･ルーレットだが、捕虜になったデニーロたちにロシアン･ルーレットを強要するのは現在の私たちが考えるいわゆる国民としての「ベトナム人」ではないことをここで強調しておきたい、　彼らは当時アメリカ軍と南ベトナム軍が共同して戦っていた「北ベトナム軍」つまり「北ベトナム共産党」の「共産党員」なのだ、
つまりロシアン・ルーレットを強要する兵隊たちはベトナム人ではなく共産党員・共産主義者と考えるのが正しいのである、

実は本作こそ共産党の残虐さを史上初めて映像化した画期的な作品なのである(本作制作公開当時カンボジアではかつてロシアや中国で共産党が政権獲得後に実行した虐殺と同様の大虐殺が進行していた)、　戦時捕虜虐待としてのロシアン・ルーレットの存在が架空だったとしても本作は北ベトナム兵士たちの人命軽視・国際法無視を正面から描いていることになる、　だからこそ共産党員とその同調者たちから本作はアジア人にたいする差別映画であるといった肝心な点から視点を逸らすことを目的とした攻撃を受け続けていることもここで強調しておく、共産党の残虐さについてはDVD「カチンの森」を参照のこと、　ついでに同DVDのマイ・レビューもぜひ参照されたし！　

上記でいまひとつ説明不足の印象を感じる人のためにブルーレイ版に長文レビューをアップしました、