時間ものSF。 ひとことで言えばそう言える。 しかし、このイマジネーションの大きさはどうだ! こんな作品は若いときしか書けまい。
著者ももういい年齢になってしまった。 「日本沈没」からも40年近くが経とうとしている。 この作品が書かれた当時、科学の概念がどの程度だったのか、未来の展望がどのようだったのか、詳しくは知らない。 しかし、タイム・マシンの実現化は、確実に夢の中にあった。 現在では夢さえも見られない。 そんな時代だったからこそ、本作のイメージを著者が描くことができたのかも知れない。
「人類の進歩と調和」は夢と消えた。 著者の思い描いた未来に、我々は立っていないのかもしれない。 だからこそ、本作を今読む意味があると思う。
個人的には、最後に老人ふたりが静かに余生を送るところが好きだ。 彼女のそばに彼はいたのだろうか。 一生のうち、ピンポイントにでも彼は彼女を見に現れたのだろうか。 彼女の一生を思うと、読んでいて涙が浮かんでくる。
光瀬「百億の昼と〜」と並び称される作品である。 質・量ともに甲乙つけがたいが、私はこっちが好きだ。 広瀬「マイナス・ゼロ」を読んだときにも同じような感動を覚えた。 時間というものは、なぜか郷愁をさそうものだ。 おそらく、実際には二度と帰ってこないものだからであろう。 我々は、過去は振り返ることしかできないのであるから。
ディスク1・1曲めの「猫の子あげます いらっしゃい」という曲名に誘われて、ついつい買ってしまったこの2枚組(どんだけねこ好きなんだ、このオレは!)。 昭和40年生まれのオレの中で“ホームソング”といえば、家にあった加山雄三さん(今回は未収録で残念)のシングル・ジャケットの曲名のそばに書いてあった謎のフレーズで「よく書いてあるけど、なんだコレ?!」という印象で、まさかこんな風に、およそ20年にわたって幅広いタイプの楽曲群を生み、親しまれてきた……なんてことはまったく知らずにいたのだけれど、いやー、聴きごたえありますよ、これは。 “ソフトロック・ドライヴィン”“TV AGE”といったシリーズのコンパイルで知られる濱田高志―たかゆき―さん最新の仕事のひとつで、ここに収められた44曲の“ホームソング”を聴くだけでも、ディスク1の大部分を占める、たとえば『ラジオ深夜便』で流れているようなレトロで妙に新鮮な楽曲群から、終盤の“万博ムード”やピースなフィーリングあふれる楽曲たちへと至った『ABCホームソング』の20年が、戦後の歌謡曲というか流行音楽にとっても激動の20年だったということがよくわかる。 「こいさんのラブコール」など、ヒットした楽曲はさすがに安心して聴けるけれど―ちなみに、レコード化された楽曲も、放送用音源を収録しているとのこと―、そうでない隠れた楽曲群にも、何かしら心をつかんで離さない要素があり、聴き終えた後には、きっとあなただけの宝物のような1曲が見つかることだろう(個人的には、ファイブ・キャンドルズの「傷ついた約束」が深く心に残った。由紀さおりさんの「あしおと」も、たまらなくセクシーでいい)。 なお、ザ・ピーナッツの「ふたりの四季」は、後に梓みちよさんの歌でヒットする「ポカン・ポカン」の原曲で、越路吹雪さんの「手紙」は「もみじの手紙」と改題されてレコード化されている。
ジャケットは地味な印象だが、48ページあるブックレットの表紙、およびケース内部のディスクトレイ内側は、当時発行されていた番組の歌集表紙をコラージュしたカラフルなデザイン。ブックレットには歌詞のほか、番組関係者へのインタビュー、そしてなんと400曲以上にも及ぶ“ホームソング”の楽曲リストもあり、眺めているとやっぱり続編、期待しちゃいますね……。
大震災、原発事故のあと、あの人はどう思って、何を考えているのか?と、その発言を待ち望んでいた知識人が何人かいました。その一人が小松左京先生でした。間違いなく、語りたいことが多かったと思います。しかし、神は先生と僕等にその時間を与えませんでした。そのかわり、僕等には『復活の日』を読んで、そして自分で考える猶予をくれました。あなたがくれたSF魂、私は守り抜いてこれから生きていきます。
30年前に本書を読んでおりまた同タイトルのTVドラマも毎週楽しみに見ていたのを良く覚えております。 今次、昨年3月の東日本大震災に遭い、本書の内容が脳裏にくっきりと浮かんできたのが再び本書を手にした理由でした。 読んでビックリ。列島が渋み行く際に海底が何メートルも隆起や沈降をしたり。これまでそんなことが起こるとは考えられなかったことがここにありました。 余りの迫力とスピード感で上下巻をあっと言う間に読み終えてしまいました。 今次の災害の悲惨さは言うまでもありませんが、本書で記述されている首都直下型地震のあり様はいつそのような事態になったとしても心の準備をしておくという意味で認識をしておく必要があるでしょう。 物語としても日本列島、日本国民とは突き詰めていくと何か国家とは国際社会とはと、本書は多くの重たい問いを問いかけているとも言えます。
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