ブュッヘンの愛弟子の一人ベケは、「技術も十分に芸術的」と言ってはばからなかった。それが当てはまる代表的な作品。レビュアー諸氏が書かれているように、作曲者の心情を必ずしも表現したものではない。思い込んで聴くとスルリと抜けていく。たとえば30番の冒頭は物足りない。私見だが、晩秋の葉がすっかり落ちた枝の間から見える陽の光はそこにない。すこし暖かすぎる気がする。フーガもそうだ。「えっ、もう?」みたいな感じであっさりしすぎている。と思えば、その逆は29番であろうか。楽器を徹底的に鳴らしまくり、「ピアノって、こんなデケー音出るんだ(出せるんだ)」と感心している自分に気がつく。爽快でもある。 なにか気になる。そんな感じの演奏だ。是非お聴きください。
1977年にウィーンのムジークフェラインザールで行われた、クラウディオ・アバド指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏によるコンサートの模様を収録。若きマウリツィオ・ポリーニのピアノを見られる貴重な記録。曲もオケも最高で現代にふさわしいブラームスになっている。 昨年ポリーニの演奏をサントリー・ホールに聴きに行ったが白髪の好々爺になっていて愕然とした。ただピアノを弾き出せばあの鋭い感性に満ちあふれたポリーニがそこにいた。 このDVDの頃のポリーニは古典に現代作品に精力的に演奏をこなしていた時期で最も脂の乗った時期だった。この運指を見る事が出来る本作は本当に貴重だと思う。
あのポリーニがバッハを録音したというだけでも驚きです。 そしてこのCD購入後、知らずのうちにもう何度繰り返し聴いたことか…
デビュー以来、ポリーニの全ての公式音源を耳にしてきましたが、 そんな彼のバッハを聴くのは今回が初めて… というのが私を含めたほとんどの日本人ではないでしょうか。
以前より海外では演奏されていたというこの平均律第1巻 今回の録音は、ポリーニにとって“満を持しての録音”というのが、 冒頭のプレリュード〜フーガを聴いた瞬間からよくわかります。 それにしても音が美しい。豊かな低音から想像するに、今回もファブリーニを弾いているのでしょうか? 演奏内容は、今までのどの演奏よりも遊びが一切感じられなく、 彼らしい生真面目な平均律に仕上がっており、 襟を正し、約2時間息抜きの出来ない演奏です。 ポリーニと共にこの時代に生きてきて良かった…との幸せな想いにすら包まれます。 チェンバロに比較し、残響が豊かなピアノの特性を十分に生かしきった心地よい フレーズの数々は生命力に満ち溢れ、ポリーニの確かな洞察力が要所に滲み出ています。
これから何度も何度も聴き込まれるにつれ、 偉大なる録音と認めざるを得ない第1巻となることでしょう。
※今回の録音でも終始呼吸音や唸り声が収録されていますが、私には全く気になりませんでした。
高いが、DVD2枚組みでボリュームたっぷりである。ベームの指揮姿はなかなかかっこいい。無骨だ。
ブラームスのピアノ協奏曲第2番はこのDVDではじめて聴いたが、第1番のほうがよほど良いと思う。アバドの指揮や、ポリーニのピアノがわるいのだろうか?
「皇帝」は曲のきらびやかさを損ねず悪くないと思った。
評価は変わりません。やはり最大の欠点は、和音構成音を全てベッタリと弾いているのでうるさくて、曲や調による変化もあまり感じられないこと。ショパンの練習曲集の音楽的な豊かさは、こんなものじゃありません。
現在は、ロルティ、ヤブウォンスキ、オールソンなど、優れた録音が出ています。ぜひ、色々なピアニストの演奏を聴いてみて下さい。
ただ、上で挙げた録音は、どれも輸入盤。彼らの知名度が低いのは、そのせいかも?
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