ショパンとジョルジュ・サンドは九年間くらい愛人関係にありましたが、その間毎年夏は、フランス中部ノアンのサンドの領地で過ごしました。その最後のころの雰囲気を再現しようとした映画です。本邦未公開。かなり予備知識を必要とする脚本で、私も一回目はギブアップしました。冒頭から10人以上の登場人物が説明ほとんどなしで入り乱れるのです。遠山一行『ショパン』(新潮文庫)を読み、最初のチャプターを三回くらい繰り返して見て人物の見当をつけ、四回目にやっと最後まで見ました。見終わってみると面白い映画でした。映画に描かれた多士済々のノアン来訪は、いろいろな人物のいろいろな年の来訪を再構成して一つにまとめてあります。だからツルゲーネフとドラクロアがニアミスしたりすることは実際にはなく、サンドの娘ソランジュ(これがソフィー・マルソー、力演)が一度の滞在のうちに婚約者を振り、ショパンに迫り、さらにクレザンジェという怪しい自称彫刻家とあっさりくっつく、という筋も実際とは違います。主役のショパンとサンドの描き方はなかなか説得的でした。筆が速くてどんどん原稿を書き飛ばし、むしろサロン運営や政治運動に積極的だったサンドが、同じ曲を毎日毎日執拗に弾いて推敲を重ねる純粋芸術家肌のショパンを、尊敬しながらもだんだんむかついてきます。ショパンもそれがわかっていながら、亡命者の身分と肺結核の進行からヒモとしてサンドに頼らざるを得ません。芸術家たちも、ショパンの友人グシマワら亡命ポーランド人も、ロマン派全盛の時代らしく、ひたすらけたたましいさわぎを演じながら、消耗し、頽廃していく感じがよく出ていると思います。邦題はいかにもひどいですが、ただ原題の意味も私は最後までわかりませんでした。なぜブルーノートなの? ご教示いただけると幸いです。
届いてからすぐ気に入りました。 品格がありこの値段はすごい。 もう離せません。
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