「親殺し」の話である。
暗い時代の暗い作品とする評者もあるようだが、劇場は満員で女性も半分は占めていたように記憶する。観客は沸き立つような雰囲気であったし、ラスト近くの検問の警官と主人公のやりとりに館内がドッと沸いたのを憶えている。みんな「打ちのめされる」ためではなく、「開放される」ためにこの映画を観にきたのである。おそらく映画館で共感を共にする最後の時代だったのだと思う。
水谷豊が現実に出会えなくて苛立つ若者を好演し、さらに脇役共々なんとなくコミカルな演技でストーリーの陰惨さを抽象化神話化して、みごとな青春映画に
仕上げている。ちなみに水谷はノーギャラであったという。
わたしにとってこの映画と「海燕ジョーの軌跡」と「遠雷」が青春時代の三部作である。
今は
水谷豊の代表作といえば、相棒。しかし初期の作品ではこれが断トツ!BDになってからは画像一新!
出版を知り、とりあえず店頭でパラパラめくって数ページ目を通したらぐいぐい引き込まれ、そのままレジへ。
テレビの喋りと同じく流れるようなユーモア交じりの文章はとてもわかりやすく、例の騒動の際に何が起こっていたのかがよく「伝わって」きます。
本文中にはそれ以外にも著者がアナウンサーを志した経緯、またアナウンサー入試や番組制作の裏側など、一般視聴者がなかなか知ることの出来ない話が
書かれ、興味深かったです。
もちろん最も読み応えのあるのは『あの騒動』について。
読み終わって改めて思ったのは、ああいったことは会社規模の大小関わらず、あらゆる所で起こっているということ。
手練手管である程度の地位まで上りつめた輩達が、自身の地位と権力、プライドを守るだけのために平気で周囲を犠牲にする。
著者のキャラクターは好き嫌いが分かれると思うけれど、非常に実力があって腕の立つ職人気質ではないかと。細やかな神経ゆえに広く目が行き届き過ぎ、
更に「伝えたい」気持ちの強さが「一言多く」なってしまうのかなと。
旺盛なサービス精神は行間からもビンビン伝わって来ました(笑)。
その豊かな才能、真っ直ぐな性格に嫉妬する輩は少なからずいたのでしょうね。
著者を貶めるための数々の妨害工作。そんなことしてる暇があったら、会社の利益を上げることをしたら?と呆れる様なものでしたが、
哀しいかな、「球体君」「
エイトマン」になる可能性は誰の中にもあり。。。
決して彼らの様な卑しい人間にならないため、自戒の念を込め手元に置いておきたいと思える一冊でした。