廉 思(リェン・スー)という中国人民大学大学院生らによって
調査された現代中国における
いわゆる高学歴ワーキングプアについて分析した本である。2009年に中国で発行され大きな
反響を呼び、日本でも出版される事になった。また蟻族という言葉も流行語として
広く認識されるようにもなった。
本書冒頭では中国の学校体制はどういった特徴を持っているのか?などについての解説がはじめにある。
そして問題についての分析がグラフやデータと共に続き、それぞれ取材した若者たちの
ミニストーリー、ルポが本書後半を占めるという作りになっている。
蟻族と命名された彼ら彼女らの集団はもともとは大卒低所得群居集団と呼ぶ予定ではあった。
しかし長すぎるなどの問題によって蟻族とされた。
(実態を正確に表現しているので大卒低所得群居集団でも個人的には良いと思うが・・)
80後(バーリンホウ)と呼ばれる1980年代生まれが主な世代となる。
彼らの世代は中国において大学の定員が大幅に拡大された事により
学卒者の価値が下がった世代でもある。
*中国の新卒者数
2004年=280万人
2005年=338万人
2007年=485万人
2008年=599万人
2009年=650万人
上記のように大卒者が急増し続けていることもあって就職が思うようにいかなくなっているのが
主な原因である。これではいくら中国が好景気であっても就職難になるわけだ。
そして蟻族達は都市部と大学の近くにある群居村と呼ばれる安い賃貸料で入居できる
部屋などを借りて生活している。ただ単に実家に帰ったりしないあたりが他国との違いであろうか。
中国の今後の動きを把握していく上で彼ら蟻族の存在抜きには成り立たないことは確かだ。
中国の未来を考える上でも蟻族について知ることは有意義だろう。