第1話を読んだ限りでは、ストーリーは全くもって分からない。 が、断片的に話が進んでいき、最終話で全てが解決したとき、読み返すと1ページたりとも違和感のない流れに驚いた。
島田寅之介さんの作品の中でも、分かりやすく、これは傑作と呼んでいいと思います。
本当にこれがデビュー作なんですか?
と、思ってしまうほどの完成度そして面白さ。厳密に言えば、
最初の章で新人賞に入選し、島田さんはデビューが決まった
わけですが、単行本デビューがこの本なわけで、もうホントに
舌を巻きます。スゴイなぁ。
副題にもあるように、このマンガは「物語る」ことをテーマと
しています。ガルシア・マルケスが「私は物語るために生まれて
きた」と言ったように、この人は「物語るためにマンガ家として
デビューした」のだと僕は思います。
圧倒的な語りに緻密な仕掛け。最初は独立したエピソードとして
呼んでいた物語たちがラストに向かうにつれて一つに繋がり、
壮大な「もう一つの物語」を浮かび上がらせます。
小説の世界には古川日出男がいて、そしてマンガの世界に島田虎之介
がいる。
この二人のような「物語」を紡ぎ、それを真っ直ぐスタイリッシュに
「物語る」ことができる作家さんたちが新しい時代を作っていくのだ
と思います。
『ラスト・ワルツ』でデビューし、その類いまれなる才能を
見せ付けた島田虎之介さんのデビュー第二作となる単行本です。
前作とは違い、「日常」をテーマとしているので派手さはない
ですが、島田さんが前作でやろうとしていたことをさらに先鋭化
し、研ぎ澄まされた世界が構築されていると思います。
映画『マグノリア』や『運命じゃない人』のように関係がないと
思われていた人々がそれぞれの「日常」と「生活」のワンシーン
にリンクし、繋がり、顔を出し、爽快としか言いようがない読後感
をもたらしてくれます。
圧倒的で衝撃的。
いったい島田虎之介というマンガ家はどこまで行くのか?
早く、いっこくも早く新作が読みたい!
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