ミシェル・ダルベルトのシューベルトピアノ作品全集。1989年〜95年の録音。
全集を謳うが完全な全集ではない。それでも、他ではこれだけまとまってシューベルトのピアノ作品を聴けない。その点でも稀少なセットだが、演奏自体の水準が高く、シューベルティアンは是非持っていたい。
演奏スタイルは、概ねゆったりとしたテンポで抑制を効かせている。慎ましいシューベルトだ。
ディスク1の冒頭、ソナタイ短調(第16番)からして、繊細で感じ入った調べを決して急ぐことなく紡いでいる感じ。ディスク2の『楽興の時』の有名な第3番、ディスク5の『4つの即興曲』作品90(D899)の第1番ハ短調などはその典型であり、静かながらも深く、時に怖いような哀しみに打たれる。尤も、シューベルトはそういう音楽を書いたのだが、スローなインテンポが大きな説得力を持っていて、ゆったりしているのに哀しみが次々に押し寄せてくるようだ。この曲の第3番アンダンテには、ダルベルトの資質が顕著。アルペッジョ風の左手の明晰ながらも霞がかかったようなヴェールの幻想性!
ディスク6の作品142(D935)のもうひとつの即興曲もよい。 これはセット全曲の白眉か?
暴力的なところ、鋭すぎるところなどは一切ない。慎ましいスタンスは崩さないが、惻々たる哀しみがゆっくりと胸に忍び込む。この演奏に較べれば多くの演奏はハッタリを効かせているなあ。よい意味でも悪い意味でも。
あとは晩年のソナタの出来が問われるところだが、果たしてどうか? その点で判断保留して★4つ。
ダルベルトは聴き手を驚かせてやろうとは絶対にしない。今回初めて耳にしたいくつかのワルツやエコセーズ、メヌエットにこそダルベルトの美点が現われているとも言える。まず、そういった小品に耳を傾けてほしい。それから晩年の“大作”(シューベルトに大作は相応しくないが)を聴いても遅くない。
変イ長調の即興曲も相変わらず慎ましいが、悲劇の頂点は凄惨な世界を開示しさえする。変ロ長調の変奏曲の可憐さにも、どこか不安げなシューベルトの影が差していて、美しいけれど(美しいゆえに)心内が冷たくなっていくようだ・・・・。
このところ、アニバーサリーもあって
ショパンのディスクをいろいろと聴いているが、そのたびにシューベルトが聴きたくなるのである。好みもあるけど、シューベルトのほうがずっと上だな・・・・。
声楽を学んでいます。フォーレの歌曲が大好きで様々なCDを持っていますが、バーバラヘンドリックスの歌声と表現は可憐で叙情的でフォーレにぴったりです。本当に素晴らしいと思います!スゼー、アメリングも良く、発音の参考になりますが、心からいい曲だなぁと思えるのは、バーバラヘンドリックスのフォーレです。