白土三平氏の傑作コミック『カムイ外伝』を装いも新たに文庫化した、その全巻セット。
文庫の表紙として新たに描かれた主人公“カムイ”の絵は、旧文庫版のものとは違って“軽やかな風合い”である。
また、鑑賞しているうちに、各エピソードの扉絵が新たに描かれたものに変更されていることにも気が付きます。
旧版でのオリジナル扉絵のままで良かったとは思うが、新しく描かれたものも“中々味があって”良いとさえ感じた。
この『カムイ外伝』という作品、“抜け忍”となった“カムイ”を主人公とする過酷な逃亡の旅を記したエピソード集であるが、
ただ“カムイ”が、次々と襲いかかってくる暗殺者(刺客)達の追求をかわすことだけに終始する物語ということでは決してない。
作品を観賞していて、“カムイ”を始めとする数多くの登場人物それぞれに“人間としての魅力”を“余りにも”感じてしまうのだ。
数多くの登場人物達・・・
名張の五つ、トネ、名張の半助、スガル(抜けくノ一)、サヤカ、イコナ、ウツセ、舞様、遠州、抱き捕りの清次、
飛天の酉蔵‥等、名のない武士や子供達、・・・。
また、鷹のハヤテ、
犬のアカ(忍
犬)、
猫のクロ、熊、‥等、“カムイ”を慕う“動物達”に至るまで“愛おしい”とさえ感じられる。
本書(『外伝』全巻セット)を観賞していて、魅力のある人物や“愛おしい”動物達がとても多いことを改めて感じた次第である。
どういう訳か、どのエピソードも“ぐっと来てしまう”のだ。
『外伝』は、『カムイ伝(本伝)』では描ききれなかった“抜け忍カムイ”と魅力ある人物達(+動物達)との触れ合いのストーリーだとも思える。
その“人間模様”こそが、この『外伝』の魅力と云うことなのだろう。