作者への応援メッセージ的なレビューが多いようですが、
私はこの６巻が特に面白く、またこの本から読んでも楽しめると思うので、こんな方にオススメという内容で書きます。

この漫画は、作者の日常をモデルしたエピソードが、４コマ漫画風に描かれています。
細かな出来事に着目する作者の視点（かなりの社会不適合者…）や
食いしん坊で怒ると狂暴だけど、夫のことを支えつつも頼りにしている「妻」の可愛らしさに、読んでいて微笑ましい気持ちになります。

また、１冊全体を通しての構成が巧みで、１６１話から始まる家を買うエピソードは、一読の価値ありと思います。
（夫婦の若かりし頃や、子供の幼稚園の話から始めるあたりがとても良い。）
重い出来事も気付かないくらいサラッと描かれていますが、同世代なら身につまされることばかりで、興味深く読むことができます。

…というのが広くオススメしたい理由ですが、個人的には私（と作者もそうなのかもしれません…）と同じような、
９０年代の「夢」や「希望」なんて言葉が溢れかえる時代に、青春をボッチで過ごして…夢を叶えることもできず…
（思えば、お笑い芸人とかゲームクリエイターなんて職種が「夢」の職業になったのもこの頃です…）
それでも今、何とか社会で働いて生きているような方にこそ、読んでもらいたい漫画です！

作者は、あとがきに書いています。
「負けたからって、そこで人生が終わるわけでも死ぬわけでもありません!!
まだまだ生きていかねばならないですし、どうせ生きていくのであれば元気に生きていきたいものです。」

これを真正面からきちんと描ける漫画というのは、本当に貴重だと思います。
少しでも共感した方は是非、手にとってみてください。

なお、若い方で以下に当てはまれば、作者の『僕の小規模な失敗』もオススメです。
・休日は新古書店や中古ゲーム屋を巡るのが唯一の生きがい
・学校の人目につかない場所で隠れるように時間を潰す
・そんな自分を受け入れない周囲を下に見ている

見事な神経症ぶりで、この病的な感覚が狙っている面白さとつながり、なかなかうまい。ほかの作品も後に読むが、この自伝がなによりよい出来だ。最後も結構驚くし、感情的には（悲しいことに）納得できる。昔からあるジャンルではあるが、壊れ方は現代的である。情けないけれど偉い。羨ましくないようで、結構やるなあと感心する。非現実的なようで結構リアルなのは、デフォルメなのかよく分からないと思わせるシュールさをうまく表現しているためだろう。狙ったヘタウマでなく、成長した下手さ加減のバランスが絶妙なのかもしれない。

　購入後、ずっと見てなくて4年間ぶりに引っ張り出して
見てみました。
　各話各話、監督脚本家が違っており、いろいろな角度から
真木よう子の物語を紡いでいます。『立川ドライブ』は
寂しくて泣きそうになりました。暴力的な物語、劇画の
ノリの物語などじっくりみせてくれますが、良い意味で
真木よう子は真木よう子であり、期待を裏切らない演技を
見せてくれます。監督の個性も楽しいです。

以前大槻ケンヂ氏の自伝的小説グミ・チョコレート・パインを読んだとき、
この人はこんなに自分の青春時代の青臭い体験をさらけだして平気なのか！と
感激したものですが、青臭くもいい話、であったし、それが現在のオーケンの
イメージを損なうものではないし、青春が過去としてある、
完成された作品でした。

ところが福満氏が青臭い青春をさらけ出すと、自伝的、みたいな
オブラートに包む様子もなく、思い切り現在にも
良い意味か悪い意味か、分からない状態で尾を引いていて、
語れば語るほど、現在のイメージを違う意味で損なわず増幅させ
完成も完結もせず、悩んで結論づけようと苦しんでいる様すら芸になる有様です。

しかしだからこそ、青春を過去にノタ打ち回った読者は共感させられると思うし、
少しも過去の思い出話にも作品にも、もちろん文学にもアートにもせず、
青臭い話をレンジで温めなおすくらいの勢いで作品にして
世間に向けてさらけ出す人ってなかなかいないから、
この人本当に捨て身だなと尊敬します。

応援してます。