高橋伴明が奥さんの高橋恵子で撮った1988年の作品。日本初のスプラッターともいわれる池田敏春の「死霊の罠」と確か同時に2本立てとして公開されたと記憶しています。
当時はまだストーカーという言葉もなかったのではないでしょうか。低予算の映画ですが、何気ない場面もカットが長くて、ビデオ作品との違いを感じます。高橋恵子の奥さんが夫の留守中にセールスマン堤大二郎にストーキングされるという、シンプルなストーリー。当然ながら、だんだんとストーカー行為はエスカレートしてゆき、最後は狭いマンションの中で血まみれチェイスになります。この辺り、セットを組んで部屋の仕切りは無視して上から撮っていたりして、なかなか良いですね。
堤大二郎はビール瓶で頭を殴られ、頬をフォークみたいなものでえぐられ、手にもいろんなものを突き立てられ、ほとんど血まみれ。最初はマンション生活をわりとリアルに、静かに描きつつ、最後はゴアシーンの連続。このゴアシーンのエスカレートがあってこそ、静から動へと物語も盛り上がります。ゴアシーンは今見ても結構凄いです。「オカルト映画」ではなく、日本のモダンホラーの先駆け的な、力のこもった作品だと思います。
東宝の8・15シリーズ(といってもこれが最後?だったかな)で、タイトルの通り零戦が主役!
零戦の誕生物語から、太平洋戦争緒戦で広い空域を席巻したころから凋落までを描いています。 前作の『連合艦隊』が暗すぎる?という批判があったのかどうかは判りませんが(大好きな作品ですが)、若い人たちの青春という観点を大いに導入していて、負けた戦争特有の暗さは当然ありますが、割と明るめに作られています。
零戦が主役ですから、今までの映画以上に零戦の云々にはこだわって作っています。操練(恐らく)の訓練シーンもありますし、下川大尉の殉職にしても、零戦の構造上の弱さを出していますし、強い零戦ばかりにはなっていません。また、搭乗員のコックピット内の様子は当時の映画パンフに書いてありましたが、それまでの映画では照準器あたりにカメラがありますが、この映画ではラダーあたりにカメラがあるような撮り方をしていて、不思議と奥行き感があって良い感じです。何より操縦桿とスロットルの動作が画面に入りますからリアルです(とくにラバウル上空でF4Uと格闘しているシーン)。俳優も恐らく目の前にカメラがあるよりやり易かったのではないでしょうか?
「イナーシャー回せぇ〜」とか「前離れぇ〜」、「コンタクト!」等、発動機始動の手順も興味深いです。また、劇中の零戦も21型が主に描かれており個人的に好感度が高いです。空戦シーンも過去の映画の使い回しもあるにはありますが、新たに撮りなおしてる部分も多く、B29との一騎打ちのシーンは当時の技術としては眉唾物でしょう。
また、主人公は下士官で整備士にも光を当てているところは評価出来ますね。強いて言えば、折角ここまでこだわったのなら、緒戦の段階では零戦の塗色はグレーないしは飴色にして欲しかったと思います。どうしても零戦のイメージがダークグリーンに日の丸というイメージが強いので興行的には仕方なかったのでしょう。
主人公の浜田正一兵曹は、戦歴からすれば、そのまま実在の「杉田庄一」です。
『連合艦隊』と比べると全体のストーリー展開が見劣りしますし、音楽もとくに印象には残りません。『連合艦隊』の時は主題歌が終わるまで誰も席を立たず、涙されている方が多かった記憶がありますが、この映画は主題歌と共に席を立つ人が少なからず居ました。でも、最後の戦争映画っぽい戦争映画だと思います。
因みに、実物大の零戦(もちろん飛ばない)を5機新造したそうです。基地等の撮影で使っています。
個人的には山本五十六戦死後のラバウルにおける204空の「6機の護衛戦闘機」の死闘がクローズアップされたのも良かったと思います。
零戦好きは是非見て下さい。
人物ストーリーと音楽のつまらなさに☆ひとつ減点です。
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