MLBのレッドソックスで大活躍してオールスターにも出場し、今季から福岡ソフトバンクホークスでプレーしている岡島秀樹投手の本。キーワードは「個性」。実際、この人の「ノールック投法」は極めて個性的である。学生時代には直すように求めた指導者はいなかったそうだが、プロに入ってからはいろいろ言われて本人もフォーム改造を試みてみたことがあった。しかし、良い成績を出し始めるとあれこれいう人はいなくなり、結果の重要性を思い知る。鹿取・桑田の先輩2人の励ましも支えになったようで、特に前者のリリースポイントと球威に関する指摘は、読んでいてなるほどと思った。
個性が関係するもうひとつのキーワードは大リーグ。個人を尊重する世界で超一流の個性派選手が揃う世界。元々あまり知識が無い状態で渡米したので、シリング、パペルボン、ベケットなど超一流の投球を見て、驚いたという。公式戦初登板は、7番バッターにそう悪くない外角低めを初球に投げていきなり本塁打され、メジャーのパワーの凄さを知らされる。そういう中で、自分の個性を磨く一方で適応する。アメリカのボールとの相性から、得意のカーブは捨て、チェンジアップを武器にする。外角に強い半面、踏み込んでくる打者ほど内角に弱いところも利用する。内野手の守備の素晴らしさや、あまりパワーヒッターとは思われていないジーターの凄さ、ブルペン投手陣の結束、移動の苦しさ、中4日で投げる先発投手の大変さ、契約の重要さ、ユーキリスとマニー・ラミレスの乱闘騒動の舞台裏に触れているところもある。そして、日本球界への復帰。カーブをまた使いはじめ、曲がる位置を調整したり、今度は日本のマウンドに苦労したりと、再び様々な適応を試みているようだ。
レッドソックスでマイナー落ちさせられたときのことや、今オフでYankeesのマイナー契約寸前にメディカルチェックで引っかかったことは、スポーツニュースで知ったときに強く同情した記憶があって、その辺の記述は関心を持って読んだ。移籍先探しについては代理人に恵まれなかったところもあったようで、優秀な代理人を得ることの重要性についても具体的に語っている。
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