本書冒頭、1945年〈昭和20年〉8月の人口ピラミッドの図表に釘付けとなって動けなくなる。 男も女も15歳から、40代までの人口がほとんどゼロに近いのである。
救いは〈と言っていいのだろうか)15歳未満の人口がかろうじて残っていることである。 それはつまり「カンプー」の「クェヌクサー」 そこから、沖縄の戦後思想は始まるのである。
「カンプー」の「クェヌクサー」とは、 「カンプー(艦砲射撃)」の「クェヌクサー(食い残し)」 という意味である。
食い残しとは凄まじい言語感覚である。
著者は沖縄学の開祖、つまり戦前の沖縄の思想の源である、伊波普猷の研究家。
桐野 夏生作品は、ほぼ読んでいてOUTもかなり面白かったので期待していました。
OUTに関連づいた作品でもなく、あまりにも期待しすぎたせいか正直面白くなかったです。
上手いと言えば上手い作品なのでしょうが、面白かったか?と問われると・・・
次回の作品に期待します
TBSラジオ系「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」でしまおさんの人柄を知った新参ファンの感想です。
番組中では、担当編集者につけられた「現代の向田邦子」なるキャッチフレーズをからかわれていましたが、
彼女と向田邦子に重なる点があるとすれば、それは文章の美しさというよりも、豊かな感受性であるように感じました。
(もちろん、美文であるというのもそのとおりなのですが。)
読み始めて数ページめくった頃にはすでに、彼女の着眼点、物事への眼差し、リアクション、解釈、
そのすべてをたまらなく好きになっていたように思います。というか、惚れてました。
こうなると大変で、
しまおさんが悲しんだエピソード(たとえば身近な人との別れ)を読むと思わず泣きそうになってしまうし、
何かにイライラしていると(たとえば買い物中の友人の態度)こっちまで申し訳ない気分になってしまうし、
何よりも、彼女が好きな(好きだった)男性について語るときには、勝手にヤキモチを焼いてしまう始末。
と、あまりセンチメンタルな感想ばかり書いてもしょうがないのですが、
とにかく、途中から本を読み終えるのが心の底から惜しくなるほど、自分にとって大切な一冊になりました。
タイトルは「ガールフレンド」。
ですが、この本を読んだ男は「しまおさんのボーイフレンドになりたい」と思うはずですし、
そんな人となら一緒に美味い酒を飲み交わせそうだと思いました。
島尾敏雄が亡くなった時、文芸雑誌各誌は、こぞって島尾敏雄追悼の特集をした。生前の島尾を知る作家や批評家の追悼エッセイを集めたわけである。そのかなりの数(10は軽く超えていた)の追悼文がそれぞれ、「私が一番好きな(評価する)島尾作品は」というような文脈で、作品名を挙げていた。私の記憶では、「死の棘」6票、「魚雷艇学生」7票、「夢の中での日常」2票、他1票の作品多数、といった感じだった。「死の棘」を選んでいたのは批評家たちで、「魚雷艇学生」を選んでいたのは作家たちだった。きっぱりと分かれたことが強く印象に残っている。「魚雷艇学生」の最後の短篇(章)を書き始めたところで島尾は亡くなったので、生前の構想が完結している作品ではないのだが、島尾は構想して書く作家ではないので、現状の形でも十二分に島尾文学の「文体」の切実さは味わえる。
「IN」における島尾敏雄「死の刺」の文体模写を凄いと思ったが、今回は林芙美子になりきってしまった!桐野夏生、凄すぎる。林芙美子の隠されていた私的な記録、という形で、林芙美子の作品としてのフィクションを書くという発想も、それを書く勇気も、他の作家にはないものだろう。
「IN」でも感じたが、桐野氏にとって小説とは、純粋な芸術作品でありながら、編集者と共同でつくりあげるものだ。プロの女流作家ならではの意識で、飾りのない真実だと思う。だからこそ、裏切られた時の苦しみは、女として作家としての全てを全否定された、地獄の苦しみとなる。今回の作品では戦時下の作家活動という深刻なテーマも絡み、描かれるのは、まさに血を吐くような命がけの恋愛であり、創作なのだが、対する男のほうは、それだけの覚悟があったのだろうか。編集者に見放される芙美子の凄絶な苦しみが作者の痛みと重なって、熱く揺さぶられた。と同時に、他の女流作家をともすれば「甘い」と思ってしまう芙美子の作家としての強さ、したたかさも、桐野氏本人に通じる魅力だ。
綿密に調べ上げた史実や、風俗の柱をきっちりと構築した上で、自在に羽ばたく創造力、芙美子に憑依する作者の語りの強度に圧倒させられ、一気に読んだ。
終わりのほうで、編集者・謙太郎とばったり会う場面にはっとさせられた。この、何気ない場面が書かれたことで、あれだけ激しい恋愛の末、子どもまで身ごもったのに、ひとりで産み、育て、小説を書き、死んでゆく芙美子の姿に、女の怖さをまざまざと見たからだ。きっちりと閉じられる物語が、フィクションとは思えず、鳥肌の立つような思いで読み終えた。
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