社会的少数者である‘半陰陽’の患者の治療の現況について、性差医療と関連して描いている社会派医学ミステリーです。手術で強引にどちらかの性別に‘適合’させるのではなく、‘生まれたままの’性を受容して生きていくことが大切という作者のメッセージは、ほかの稀な先天性疾患の患者に対しての偏見を打ち破るうえで大切なものと思います。
アフガニスタンのタリバン政権は女子から教育を奪っていたこと、成人女性はブルカで覆い人というより物に近い扱いであったことを本書で知りました。主人公の少女は母親をタリバンに殺されてしまいます。主人公も家族も失意の中にあっても平和で明るい日々が来ることを信じて「今できること」を続けていきます。それが命の危険を伴うことであっても。
私にとって学校は「行かねばならない所」であったし、砲火、爆撃のない街にいます。しかし四方八方を様々な競争に囲まれ、まるで砲火爆撃のように競争が襲いかかってくるように感じることがあります。この「ソルハ」は子供も大人も競争に撃破されないための一つの道しるべになると思います。
戦前、医大の卒業者は、徴兵で召集された場合は一兵卒として二等兵で入隊しなければならないが、
軍医見習士官として志願すれば、数か月の実務後に軍医中尉として遇されるという道を選ぶことができた。
一兵卒と士官待遇の差は大きく、誰もが志願し軍隊を経験することとなる。
その様な大学を卒業したばかりの若者の空襲、原爆、洞窟戦や、ソ連による占領、捕虜、戦犯などの体験談を作者がまとめ上げたものです。
(恐らく医学誌の寄稿文を作者の目で書き直したものと推測)
通常の軍隊記と比べると、前線での戦闘はないものの、徴兵検査員だったり、原爆症の調査だったりと他ではなかなか読むことのできない興味深い内容でした。
ただ『蝿の帝国』というタイトルの為に、この本を手に取るのを躊躇してしまわれる方が多いのではないかが心配です。
全15話のうち、蝿の出てくる話はたったの1話。わざわざこのタイトルにする必然性は全くなかった。
軍医たちの黙示録だけで十分で、そのほうがよかったと思います。
ギャンブルで人間関係や生活に軋みがでたら、依存症のおそれあり。
この本の中にはたくさんの事例が載っており、必ず悩んでいる現実に近いものがあって、ギャンブル依存症の本人も家族も参考になる一冊だと思います。
なにもかも手探り状態なら、まずこれを読んで現実を受け入れる覚悟をするとよいと思います。私はそうしました。
目の前を流れる筑後川。その豊かな水の恩恵を受けられない村があった。畑には、一滴の水も 流れては来ない。ついに5人の庄屋が、全財産と己の命を懸けて立ち上がった!
川よりも高い場所にある村。そこでは、朝早くから暗くなるまで川から桶で水をくみ上げる 人間がいた。だが、どんなにがんばっても畑は潤わず、作物の育ちも悪かった。村の人びとの 生活は貧しいままだ。それでも、当時の人びとはその土地から離れることができないのだ。 運命を受け入れ、耐えるしかなかった。そんなあきらめの境地にいた人びとを救ったのは、 5人の庄屋だった。彼らは、全財産そして命までも懸けて、大工事を決行する。反対派の人たちを 説得できるのか?藩を動かすことができるのか?庄屋たちの運命は?緊迫した状況を感じながら 読み進めた。工事には、さまざまな困難が襲いかかった。そのひとつひとつを乗り越え、人びとは 悲願を形に変えていく。「信念」が何ものにも勝った瞬間、大きな感動に襲われた。読み応えが あり、心に強く残る作品だった。
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