最近反ポピュリズムの本がいろいろ出されているようだ。理由は言うまでもなくポピュリズム政党・民主党があろう事か政権を取ってしまった事にある。民主党の2009年マニュフェストは「財源の裏付けがない」と当初から懸念されていたが,案の定これに書かれた調子の良い政策は何一つ実行できなかった。そればかりか,鳩山元首相による沖縄・普天間基地問題の迷走で日米関係を危うくさせ,菅前首相が原発事故での過剰介入で現場を混乱させたのみならず,思いつきの「脱原発宣言」で日本のエネルギー政策を大きくミスリードした。
この民主党の失敗から,日本国民はポピュリズムの恐ろしさを痛感し,二度と同じ失敗を繰り返すまいと多くを学んだ事だろうと思ったが,どうもそうでもないらしい。橋下大阪市長の日本維新の会が実力以上に人気を集めているようで私には不安だ。橋下市長はテレビ映りのする新鮮味のあるルックスを持ち,この本の著者の渡邉氏が言うとおり,歯切れ良く記憶に残る「ワンフレーズ」でテレビ視聴者の印象操作をする事に非常に長けている人物のようだ。
渡邉氏は日本政治を悪くした根本原因を「小選挙区制とマニュフェスト至上主義」と明快に言い切る。小選挙区制にして政権交代が起こりやすくなる事は良い事だろうと私も当時思慮浅く思っていたが,現実に政権交代が起こってみると弊害が非常に大きい事がわかる。一選挙区で一位にならないと当選できないので,どうしても万人ウケする耳障りの良い政策ばかり並べる事になる。国民の耳には痛くても,本当に必要な政策を言う人が当選し難くなってくる。
著者は今の日本の難局を乗り切るのに適切な政治形態は「中型連立」であるという。先日も民主党の党首選挙の様子をテレビでやっていたが,野田総理に対する対立候補の主張は野田総理の政権運営に対する批判であり,「税と社会保障の一体改革」に対する真っ向からの反対であり,2009年マニュフェストの通りもう一度やり直すと言った空論である。これが同じ民主党員だと言うのだから恐れ入る。ここまで野田総理と意見が異なるのなら本当ならば脱退ないし党の分裂は避けられないはずだ。いっそ分裂してしまった方がすっきりするだろう。そして自公と意見が近い民主党の勢力が連立を組むのが安定政権に一番近い道だろう。
私も「ねじれ国会」の害がここまで大きいとは思わなかった。去年の3・11の大災害に対していくら何でも与野党一致結束して国難に当たるものと思っていたが,結局は相も変わらぬ与野党の足の引っ張り合い。国民不在の主導権争いで,政治をやらないで選挙ばかりやりたがる。これは単に個々の政治家の資質の問題だけではないだろう。何らかの連立政権を作って安定した政治基盤を作らなくては,誰が総理になっても何も変わらないだろう。
渡邉氏の論説は大変明快で説得力があった。何らかのポピュリズム政党が表面的な人気を背景に多数勢力になってしまう前に,考え方の近い保守勢力が党を超えて大同につき,安定政権を築く事。これが多くの難題を前にした日本政治を正しく強固なものにしてゆく,最も確かな方法ではあるまいか。
初めてこのアルバムを聞いたのは、小学生の頃。まだLPレコードだった。冒頭の「支那の夜」でチャイナムードに圧倒され、以後怒涛の中国ワールドに至る。戦前戦中と、渡辺はま子は李香蘭とともに大陸歌謡の歌姫として一世を風靡。戦後「ああモンテンルパの夜は更けて」「美わしのサンディエゴ」など、戦争の重荷と平和友好の歌に新境地を開く。このアルバムでは若い頃とは一味違う円熟の歌声を聞かせてくれると共に、曲目もベスト・オブ・ベストといった感じでお買い得感を得られる。
この二人のコラボレーションは以前にも「ラヴ・レター」という曲がありましたが、この曲も「マル」。区さんのボーカルは本当に「歌」が歌えるそれなので浜田さんが惚れ込むのもわかります。次回はぜひ区麗情による「全曲・浜田省吾カヴァー集」そんなアルバムを期待します!
何かと物議を醸すことの多いナベツネさんの回顧録です。 若くして鳩山一郎、大野伴睦らの信頼を得ていく過程、中曽根氏との友情、社内での抗争、それぞれの政治家 の評価などざっくばらんに語っています。 保守合同からの自民党政治家たちの系譜やそこで起きてきた抗争などを“歴史”としてある程度知っている人 にとってはおもしろく読めると思います。 新聞記者とは単なる文章書きではなく、政治家同士を結びつけたり、政治家の世話をしたり、時には組閣人事 の希望を総裁に伝える役割を果たすなどかなり濃密な人間関係を構築するものだと感じさせてくれます。(現代 の記者はそうではないだろうけど) 回顧録を読むと、この人が読売の政治部長、社長、会長と駆け上がっていくことは納得できる気がする。 しかし、専門外の野球やサッカーに口出ししすぎたのがこの人にとってあまりにも大きなマイナスだったのだ ろうと感じた。
(ある一系列を除いて)マスコミでしばしば 「ナベツネ」と揶揄され、批判される渡辺恒雄の一代記である。 彼の強烈な個性と過激な闘争心はどこから生まれたのか。 その答えを求めてこの本を手にとった。 苦渋の少年期から共産党員時代、読売新聞への入社から 社内の派閥争いにおける権力闘争をどう勝ち抜いていったかが 綿密に描かれている。 私はかねてから彼の無計算に思える激しい言葉の数々と それとは裏腹に綿密に構築された理詰めの戦略思考のアンバランスさ に疑問を持っていたが、この本を読んでその秘密の一端が わかる気がした。 つまり、彼は新聞人というより最強の政治家なのである。 彼にとって他人は「打ち砕くべき敵対者」か「自分に完全服従の 追従者」かのどちらかにはっきりと分けられるのだ。 著者が引用するマキャベリの君主論の言葉がこれほど ぴったりはまる男は今の日本には他にいないだろう。 それにしても読売新聞の歴史はこのような強烈な個性を もった人々によって彩られている。正力松太郎、務台光雄、そして渡辺恒雄。 以下の二冊をあわせれば「ゴッドファーザー」のような読売ファミリーの闘争の歴史、一大トリロジーになる。 あわせておすすめしたい。 ・「巨怪伝―正力松太郎と影武者たちの一世紀」佐野真一 文春文庫 ・「新聞の鬼たち 小説務台光雄」 大下英治 光文社文庫
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