ノーベル物理学賞を受賞した、といまさらそんな枕でもないわけですが、ファインマンさんの自伝的なこの本は、文章も内容もわかりやすくて、専門の読者向けじゃないというだけでなく、大抵の本に比べても読みやすいくらいだと思います。なんといってもおもしろくてとても魅力的な本です。途中本当にごく少しだけ専門的な話も出てきますが、普通の人にもよくわかるように説明されているので、考えながら読みすすめると、ふむふむなーるほどという感じで理解できます。個人的にはファインマンさんに限ったことではありませんが、戦争を通過した科学者の本を読むときに、本がその辺の事情に言及するあたりを読むときは、いくらか神経が集中するといか張り詰めるというか、そんな感覚になってしまうのですが、「Los Alamos from Below」という章の終りなんかはぐっときました、というか心がしんと静まり返りました。