何もかも独占している賢兄。 全てにおいて劣る愚弟。 劣等意識と憎悪は高まって・・・悲劇を呼ぶ。 私は愚弟に同情する・・・彼がやったことは卑劣だが、気持ちが分かるので・・・いたしかたないとも思う。
父に思いを残して逝った実母のかわりに復讐することだけを考えて幼い頃から生きてきた柊一。個人的にはこんなうじうじ型は旦那にしない方が良いと考えるがそれはさておき、人一倍優しい少年であったからこそ、激しく父や義母を憎んだのだろう。そして義母の娘である妹の詩織の無垢な白さと優しさを、どうしようもなく憎みながらも愛し、虐げ続けた。柊一が詩織の後を追って散ったのは、果たして実母の望んだ事だったのだろうか。それとも実母の復讐という呪縛からついに解き放たれたのだろうか。 同時収録の「花の庭」では、上と対照的なほのぼのとした愛が描かれている。彼は結局死んでしまったけれど、彼女にはかけがえのないものをたくさん残してくれた・・・。 どちらの作品もとても好きです。
この人の作品は、母が買っていた雑誌に載っていたのを小学生の頃に読んで衝撃を受けたのを覚えています。この「壁の前で」に収録されている話も、どれも衝撃的な内容です。でも、私たちの身の回りに起こりうることでもあり、いつ自分がどの立場になってもおかしくないように思います。
大人になって、改めて作品を読み返し、扱われているテーマの重さを改めて考えました。しかし、ただの興味本位の話ではなく、色々と考えさせられたり何とも言えない気持ちになったり。。。
この人の作品は深いです。
大抵の場合、映画をみてから『風と共に...』にハマった人が多い中で、私はこの作品から先に入ったひとりです。幼いころ、断片的に読んでいた本作品でしたが、文庫本化されて読み直し改めて感動しました。 不幸にも映画だと今一つピンとこなかった方も、これならば(映画ではさらりと流されていた)登場人物の心情にも共感できるのでは?映画、翻訳、原作をすべて経験された方にもぜひ手元においていただきたい作品だとおもいます。
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