腕っ節はめっぽう強いが情には弱く、いつも女に振り回されてばっかりの主人公。
その主人公を取り巻く数々の女性たち、事件。
男のツヨサと、女のツヨサは違います。それをここまで面白く、興味深く書けるのか。作者の腕は確かです。
素晴らしいたくさんの登場人物と、ツヨク、それぞれの道を生きる女性たちを、ぜひ感じてみてください。ご一読をお勧めします。
若いヤクザの話。しかし優しすぎてヤクザになりきれない男の話。切なくて泣けるシーンが何度かあった。優しいまなざしが欲しい人はぜひ読んでください。いい話です。
山手樹一郎の「江戸名物からす堂」と似通った作品ではないでしょうか? でもまるっきり同じと言うわけではありませんし読みやすいのでこれはこれで面白いと思います。 他の方もレビューされておりますが「華(ヒロイン)」に乏しいのが難です。 やはり時代小説の「華」は物語構成の中では大きなウエイトを占めると思います。 男性が主人公の時代小説の場合は特に「女性」を絡めたハラハラドキドキ感は必要と思います。 史実に軸足を置いた歴史小説ではその必要ないとは思いますが......。 お奨めの本です。
お家騒動の最中惨殺された妻、その妻が背負った悲しい秘密。 弓削玄之助は妻の今際の際の言葉を胸に江戸に出て瓦版書きとして市井に生きる。 その妻の今際の際の言葉に隠された秘密こそがお家騒動を解決する重要な手がかりとなる。 弓削玄之助が全編を通してこの謎解きをしながら幾つかの瓦版ネタごとに物語が完結する。 個々の瓦版ネタは悲しい幕切れが多いが人の心の奥底を垣間見せる。 全編を通して瓦版屋の娘「お峰」が落ち込みそうになる読者を救ってくれる。 特に最後の「遺言」の章は良いと思います。 離婚や不倫のネット書き込みがやたらと多い昨今の世情を考えますと、 男と女、夫と妻が寄り添う意味をちょっと考えさせられます。
欲を言えば表紙の絵が残念です。 女性の着物が江戸時代のものと見えないことが大変残念です。 表紙の絵は大切と思います。
こちらのレビューではあまり評判のよろしくない主人公の燿子ですが、実際に読んでみると、戦争なんて他人事、と思って生きてきたヤマトの女性なら本当にこんな反応なのではないか、と思わせてくれる描写だと思いました。
主人公の失踪する恋人の末路も、なにもその選択をしなくても・・と思ってしまいますが、それは、重荷を背負ったことがなく、ただ想像するだけの立場だからこそ思うことなのかもしれません。
かつての沖縄戦や戦争を体験したことのある人、人を傷つけざるをえない状況に立たされた人にしかわからない傷みや何十年も背負い続けていくしかない呪縛のようなものが確かにあるのかもしれない、とハッとしました。
「このまえの戦争」この言い方も、ささいなことですが、そうだ、戦争は遠い過去の話ではないと感じる表現でした。
ある程度沖縄戦や「このまえの戦争」である太平洋戦争について文献やドキュメンタリーに関心を持ってきた私ですが、「資料」ではなく「生の話」としてのおじいの話や、基地があることゆえの混血児が立たされている立場、などとても勉強になりました。
沖縄をただの観光地、くらいにしか思っていなかったであろう主人公の燿子の価値観が変わっていく様子がとてもリアリティにあふれています。
決して派手な話でも、お涙ちょーだいの感動話でもありませんが、だからこそ根底に流れるものを感じてもらいたい、多くの人に読んでもらいたい一冊だと思いました。
死者に対する思い入れの強い土地で、あれほどの民間人が巻き込まれた激戦があったことも、なにか悲しい縁があってのことだったのかもしれないと思わざるを得ませんでした。もし本土で同じことがあったとして、沖縄の人々のように思いを強く馳せてこれただろうか・・
沖縄という強い光の下だからこそ、死や悲しみの影が濃いような気がし、捨石にし、今なお基地を押し付けて平気な顔をしている本土の人間としてなお一層、申し訳ない気持ちが強くなりました。
無知でいることが一番の罪です。沖縄で起こったこと、本土の人間が沖縄をどう扱ってきたか、知らずにいる人、ぜひ読んでみてください。
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