オープニングは希望に満ちた目を持つジョン・ヴォイトとジョン・バリーの明るく 少しせつないメロディの曲から始まる。私は最初この映画は男のロマンを描いた西部劇だと思っていた。 実際の内容は えらく退廃的なものだった。その中でジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンとの純粋な友情やほんの少しのユーモアが光る。ジョン・ヴォイトの芸術的な妄想やトラウマの表現の仕方は見るものを圧倒させ、監督ジョン・シュレンジャーの力量をうかがわせる。 挫折はどんな人にとってもドラマなんだと実感する映画だった。
この映画は日曜洋画劇場で初放映されたときに見て感激し、その後も名画座に脚を運んで見ています。明るいオープニングから一転、ニューヨークで現実の厳しさを思いしらされる展開。ジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンの演技も素晴らしく、本来ならどちらかがアカデミー主演男優賞を取っていてもおかしくないぐらいの名演でした。ジョー役のヴォイトもまさにぴったりの役柄でしたが、特に汚いラッツォ役のホフマンにとっては生涯の代表作の1本ではないかと思います。この映画のDVD化に当っては以前から日本語吹替がないのが残念です。以前TVで見たジョン・ヴォイトに橋本功(角刈りの男らしい俳優さんでした。意外にぴったり)、ダスティン・ホフマンに穂積隆信(強烈な個性)の吹替がいまも耳に残っており、もう一度聴きたいのです。同じ御意見の方も必ずいると思います。
1969年のアメリカでは、テキサスの田舎者がニューヨークのような大都会に出てきて、己の性的魅力というか男根陰茎動力だけで生活できるというドンキホーテ的な妄想がリアルに息づいていた。ともいえる。そういう思わず笑ってしまうように楽しいような、しかしどうにも物悲しいような、もはや遠い目でしか眺めることのできない、懐かしい映画である。
NYの冬は猛烈に寒い。そのNYで売春婦に事後に20ドル要求して唖然とされたジョン・ボイトが、避暑地のマイアミに逃れてそれを許す婦人に出会えたことは、自由を愛する青年と合衆国にとっての大いなる喜びであったが、その時遅くかの時速く、心友ダスティン・ホフマンは乗りあいバスの中で帰らぬ人となってしまった。
当初水と油のような関係と思われた2人の青年を死線を越えて結んだ絆の中身はいったい何だったのだろう。その、地上ではなかなかに得難い稀少な友愛を、うざったいとも、まぶしいとも思えてくる名匠シュレシンジャー心尽くしのラストは、人類史上稀有な暑い夏への挽歌でもあったのでしょうか。
映画の中に効果的に使われているクラシックをまとめたCD。クラシックの入門にもgoodです。何よりも良いのは、どの曲も「名演」と言われる演奏を選んで載せている点です。カラヤン、ラトル、ムーティーなどを集めたお得な一枚です。
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