おおげさに聞こえると思うが、私にとっては、この世にあるすべての演劇作品の中で1番。 どんなに名作と言われる映画を見ても、これほどの感動を味わったことはない。 私の体の半分以上は、このドラマでできているといってもいいくらい暗記するほど見た。 脚本、演出、音楽すべて最高。 1よりも2の方がおもしろい。 主役の中井貴一氏は、この時23歳。演技うますぎ。当然のごとく現在、日本を代表する俳優になりました。 放送は85年。当時こんなにレベルの高いドラマが放送されていたなんて信じられない。 1話完結のお子様ドラマがあふれている昨今、もう民放では絶対に作られないドラマでしょう
新入社員にとって、会社は決して居心地の良い場所ではなく、学生気分を捨て去るのに一生懸命でしょう。特に、初めて出くわす上司という存在には戸惑う人も多いでしょうね。 中井貴一演じる仲手川良雄の上司は、昔かたぎといいますか、毎晩のように飲みに誘い、私生活にも割り込んできます。 無遅刻無欠勤、まじめ一本槍の者にとっては、言われたことは絶対服従してしまうような相手。 その姿を見て、学生時代を知るものは笑ったり、馬鹿にしたり。 友人の間を走り回っていた気のいい仲手川良雄は、いつの間にか自分だけが一人取り残されていることを感じます。 そんなとき、遂に恋が始まります。 盛り沢山のエピソードで語られてゆく、この物語は、カットされている場面もかなりあるのではないでしょうか。 DVDで改めて見てゆくとそんなことが感じられました。 逆に、中身が詰まっているとも言えるでしょうか。新入社員時代を思い出します。
ふぞろいの林檎たち。 なんてすてきなタイトルでしょう! このタイトルとサザンの「いとしのエリー」がまさにぴったりです。 テレビドラマはもちろん映像化された作品で楽しむ物ですが、一度見た作品をシナリオで読むのもなかなかいいものです。読み進めるうちに中井貴一、石原真理子、柳沢真吾などの俳優たちが頭の中で動き出すのです。サザンの歌が聞こえてくるのです。シナリオを読む楽しさは、読む側が演出家になった気分で読めることです。 みなさんもシナリオ読書をはじめてみませんか?
『ふぞろいの林檎たち』最終シリーズである。今後〈5〉が作られることはもうあるまい。いよいよ終わりかあ、と、そんな感慨をもって本書を読んだ。ドラマの方は見ていない。
〈4〉の特色は大きく2つあるように思う。1つは、新しく2人の若者(克彦と美保)が出てくること。良雄、健一、陽子、実らおなじみの面々をつなぐ存在として、彼らは大事な役割を果たす。ビルドゥングスロマン的な視点を取り入れることで、物語に新しい風が吹いている。何より作者の山田太一自身が少しマンネリを感じていて、その弊を回避したかったのではないか。
もう1つは、良雄の母・愛子が隠れた主役になっていること。さらに実の母・知子も、決して出番が多いわけではないけれど、重要なポジションを担わされているように感じた。後半、2人のやりとりでグッとくるシーンがいくつもあるし、もしかしたらこれが最も肝ではないかとさえ読めた。もちろん大きなハイライトは別に用意されていて、それはそれで読み応えがあるのだが、僕は静かな老女たちの会話にこそ心を動かされた。
ドラマを見ていないくせに、「活字で」本シリーズを制覇した僕は、珍しいファンかもしれない。ドラマを見てみたい気もあるが、是が非でも見たいというような情熱はない。僕にとって『ふぞろいの林檎たち』は、すでに「活字で」完結しているからだ。
いまや、ゆとり教育のおかげで学校は週休2日だし、運動会でも順位をつけなくなった。そして少子化によって一人の子供に構う時間の増えた親はモンスター・ペアレンツとなって学校に自分の子供だけ中心の我儘を言ってくる時代である。大学進学率も100%近くなるのではないかと言われている。しかしひとたび社会にでれば学歴社会、競争社会であって、親に頼るわけにもいかない。そんな現代社会の問題がすでに20年以上前のこの作品にも描かれています。ラーメン屋の実の母親の甘やかし、岩田の実家の一流志向、などなど。彼らの成長や挫折は当時、同年代で一流大学に入れなかった我々は非常に共感したものです。 最終回の愛をつらぬき通す小林薫の男らしさ、たこやき屋でバイトする中島唱子を発見する時の柳沢慎吾の演技、高橋ひとみ、手塚理美、石原真理子の若々しさ、サザン・オールスターズのBGM、何度みても新鮮な感動があります。
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