大変読みやすく、しかも面白い新左翼本だと思う。私見では「細かすぎず適当すぎない」その内容は新左翼史、あるいは新左翼自体の「入門」としては最適なものである。
あとがきによれば著者は、著者(75年生まれ)と同世代とそれより下の「若者」が新左翼を知るための「ブックガイド」を目指したそうだ。実際本書は常に多数の文献に触れており、あの時代に有名だった人間や本、さらにはその後書かれた必読的な新左翼本も基本的なものは大方知る事ができるように思う。既に知っているという人なら何でもないのかもしれないが、高橋和巳と聞いてもピンとこず『憂鬱なる党派』と聞いても「ああ!」とならず『われらの時代』も分からず、『二十歳の原点』も『狼煙を見よ』も知らず、あの保守論客の西部邁が元新左翼である事すら、そしてその西部邁が新左翼時代を振り返った本を出している事すら知らないような人がいるなら、そしてそういう人がしかし新左翼に興味は持っているとか、特別あるわけでもないがちょっと知ってみたい、というのなら、そういった基本的な文献が引用や解説付きで多数紹介されている(無論念のため言っておくが本の紹介本ではない。あくまで豊富な文献を参考に、それらの文献に盛んに言及し紹介し引用しながら、新左翼の前史から現代まで歴史を辿っていく本である。)本書は、新左翼を知るための出発点・入門として極めて有益なはずである。208頁には扱った文献が全て書いてあり、これもやはり便利である。本書が物足りないというのなら、本書で紹介される複数の文献を次のものとすればいいのである。
現在書店によくある新左翼本は当事者の回想録が多く、それは前提知識なしでは分かりにくいものが多い。内容も連合赤軍など一部に特化している。さらに通史本も新左翼の人々が何を思ってそんな事をしたのかを理解するのには向いていない。…というのが著者の認識だが、この流れでいくと恐らく著者は前提知識がなくても分かりやすく、一部に特化しているわけでもない仕方で新左翼の歴史を辿りつつ、しかも出来事・事件としての新左翼だけを記すのではなく、新左翼を支えた気分、精神を多数の引用などから明らかにし、より新左翼の精神を身近に感じられるよう努力した…と言っていいだろうか。この努力はある程度成功していると私は思う。
著者自らが押し出しているせいで「自分探し」をキーワードにしている新左翼本である事が良くも悪くも強調されているように思うが、私自身はそういうキーワードを殆ど気にしなくても面白く読む事ができた。またロスジェネとの関連性にあまり関心がなくても読める。著者自身はそれを大事にしていると思われるので、これはあまり良い読み方ではないのだが、最悪そういうところを無視して二章(戦前〜50年代)から八章(78年〜現在)までの150頁程度を読むだけでも十分勉強になるだろう。
実話を元に制作された、映画のサントラ。歴史関係に興味のある人は ぜひ。
何回目かのリイシュー版です。 今回はスリムケースになったので厚さが1/2になって場所取らないです。なんかホームセンターのパチもんDVDみたいだけど。 価格も安くなって(TV番組を入れただけだからこれ位が適正価格だと思うが) しかも、このあさま山荘のDVDは番組2本分入っているのでお得です。 あさま山荘もの映画を観る前に観ておくと映画が楽しめます。
ただ、単品で買うと全巻収納クリアケースが付かないのが残念。このケースだけ売ってほしい。好きなものだけ集めたっていいでしょ。
映画のパンフレットといえば、内容なんてないに等しいような数ページから十数ページの薄っぺらなものになんでこんな料金設定なんだ?っていう感想を抱くくらいに費用対効果について不満を持たせるものであることがほとんどだが、本誌はまったくそんな感想は持たせない。内容は、連赤事件について、その背後にある諸々の社会的状況等を1960年代から記述し、その事件の諸相について、詳細な事情がわかるようになっている。時間の問題で映画においては十分な時間を割いて描出できなかった事柄や、省かれている事柄について、いわば映画を補完する役割を担っている。その他にも、映画のシナリオや、関係者による短文、映画の撮影シーン等々、内容は盛り沢山。これを映画館で購入してもたぶん現地では読みきれなかったであろう。
個人的に、山本直樹は短編作家だと思っています。
というのは、長編でも、一貫したストーリーを物語ると言うよりは、
断片の集積として、作品が出来上がっています。
「あさってDance」も「ありがとう」も「堀田」もそうですよね。
その山本直樹が、首尾一貫したストーリーを物語る、
それももう4巻も続いている(あさって〜ですら7巻で完結)、
というのはまさしく新機軸だと思うのですよ。
で、さて、果たしてこの作品は?
初めて1巻がでたときに買って読んで、正直、がっかりしました。
なんだか分からん、というのがその理由です。
それでしばらく放置していたのですが、4巻まで出ているのを見て、
まとめ買いして、最初から読んでみました。
おもしろい。
まとめて読んで初めて気づきました。
話はゆっくりと進むため、1巻だけでは長い物語の断片でしかないということに。
これは、これまでの山本作品と明らかに異質です。
中身は事実の羅列に近いものがあるとしても、
自分が生まれる少し前に、ここまで世の中が過激だったとは、
という新鮮な驚きと、知らぬうちに引き返せないところまで来てしまう主人公達の、
その運命を追体験している気になり、それこそが
山本直樹がなぜ連合赤軍を題材として本を書こうと思った理由なのだと思いました。
事実は小説よりも奇なり、「ありがとう」でオウムを先駆けたと思いつつも、
カナリアで事実に負けたと言った作者が、初めて事実を題材に書いた漫画が、
どこまで他人に及び知ることのない当事者たちの事実を
漫画的現実の中で現前できるか、その試みはまだまだ続くのでしょうが、
我々は断固支持です。
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