1969年 ヴィスコンティ監督作品、フィルムに焼き付けられた比類なき世界観、極上の総合芸術にちがいない。
この映画の持つ閃光のようなforce(力)には ただただ圧倒される。
俳優達からも最大限に魅力を引き出し、超一級の美は彼に見出だされ陽の目をみる運命と言われても必然とさえ思う。
157分の大作であるこの作品は、モラル、タブーを凌駕した悪趣味と紙一重の、芝居がかった舞台劇。 なのにむせかえるような硬質の美を保ち、時を経ても色褪せない名画のように印象に残る、奇跡の映画。 凄まじい説得力だ。
ナチスのその後の歴史を知るように、所詮はこの浮き世で栄華を誇ったとしても、それは滅びへと向かう序章にすぎない一瞬の輝き。
俳優陣ではSS中尉アッシェンバッハ役のヘルムート・グリーム。 (美しさの次元が違う俳優) 親衛隊指揮官の軍装が誂えたように似合い、操る人々の弱味や憎悪を嘲り笑う姿は、私欲が無いだけに空恐ろしさが倍増するイノセントな死神の横顔。 はまり役だ。
誰もが本心ではこの男を信用してないにも関わらず、毒をもって毒を制す、悪魔のような囁きに、醜悪な感情を刈り取られるがごとく自ら身を捧げ破滅へと陥っていく。
思想やイデアの実現に狂信的に突き進み、滅んで行く時代と人々に人間の弱さ儚さを感じて一抹の救いを見る。
この爛熟した文明の現代に、ルキノ・ヴィスコンティの美学、energyに触れられて幸せだ。
1969年制作 イタリア=スイス 157分 一言でいいますと、ナチス台頭時代のドイツの貴族の一家の大河ドラマ 歴史的背景から言いますと、1933年ヒットラーがSS(親衛隊)によってSA(突撃隊)を粛正させた事件の映画化だから、シュマイザーMP40が登場するのは考証にあわない。ってこな事はどうでも良いのですが、主人公はフリードリッヒ(ダーク・ボガード)ではなく、どう考えてもマーティン(ヘルムート・バーガー)でしょう。 変態鬼畜野郎たちの晩餐会と言った感じで「羊たちの沈黙」や「ハンニバル」なんて片手でぶち抜く凄さ人間の業の深さを描いています。 まさに邦題の「地獄に堕ちた勇者ども」ぴったりですね。 1969年当時の古さを全く感じさせない映画ですね。 心臓の弱い人や、人並みの道徳心がある方にはお勧めできません。
相続をめぐる家長的室内ドラマを背景に、ドイツ鋼業界は本音を言えばナチスとの軍産複合体制の夜明けを待望している。 一方、財界やプロイセン伝統のドイツ国防軍にとってヒトラー子飼いの私兵「突撃隊」は目ざわりである。 新生ドイツのために培ってきた協力関係も、ヒトラー政権が近づくほど煙たくなって罅割れが生じ、ついには粛清に至る。 こうした政治的妥協を巧みに用いたヒトラーの偽装的な中道路線の空恐ろしさを見事に描写した作品である。
この物語の底流には Ha'liebe すなわち憎悪愛がそこかしこに散りばめられていて、登場人物各々が未だ得たいの知れな いナチスの魅力に撮り憑かれながら、性格的弱点にカンフル注射を打たれ権力に迎合していく小市民の傲岸さをヴィスコン ティは喝破している。
なんというか「やはりビスコンティやな」っと思わせてしまう重厚さでした。ヒトラーが台頭する虚虚実実の駆け引きの流れを知っていないとこの映画の面白さは半減するかもしれません。なぜナチス同士が殺しあうのか?って途中で訳が分からなくなる人もいるでしょうから。この事件で唯一ヒトラーを「おい」って呼べた同士(突撃隊のレーム)を抹殺してしまうことになります。まあこれで誰も気兼ねする人はいなくなったわけです。ドイツ人の映画のはずが英語ですし、スウエーデンの大女優イングリッド・チューリンからイギリスのシャーロット・ランプリング(この人この手の映画よく出ますね)、青年はフランスのルノー・ベルレーでしょうか??俳優さんは盛り沢山です。ラストシーンは狂気ムンムンですね。ビスコンティはナチスを狂気と見たのでしょうか?
性的倒錯、耽美、頽廃、官能美、倦怠、俗悪、そして滅びのロマンティシズム、、、。これらは、この映画を評する際、必ず謳われるキー・ワードの数々であるが、イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティが、ブルジョワ階層の没落、ファシズムの台頭、ヒトラーの第三帝国の隆盛と不吉な前兆、という3つのコンセプトを題材に描けば、必然的にそうなるであろうと実感出来る傑作だ。他のヴィスコンティ作品同様、重厚でデカダンス溢れるオペラの如き濃厚なドラマが、2時間30分、じっくりと展開する。当時20才だったシャーロット・ランプリング(!)を子持ちのエリザーベト役に抜擢したヴィスコンティの慧眼ぶりもさすがだが、物語の核となる母子を演じたイングリット・チューインとヘルムート・バーカーが白眉の素晴らしさだ。ベルイマン映画とは全く違う顔を見せるチューインの狂気じみた演技、そして、晩年のヴィスコンティに文字通り寵愛されたバーカーの、幼女姦通、女装、男色、母子相姦と、グロテスクながらも、他の俳優たちを駆逐する強靭な存在感が凄い。
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