辰吉さんの家族とのエピソードがやはり感動した。 特に父親、粂二さんとの子供時代のエピソードはすごく個性的で為になる。 また、辰吉流のボクシングへの考えが分かり、よりボクサー辰吉丈一郎を知る事ができる。
辰吉の写真などもたくさん収められていて、ファンにはたまらない一冊だ。彼が書いている本とはまた違った角度で楽しむ事が出来る。ぜひとも後二試合が見たい。その気持ちを再確認した。まってるぜ。
各世代のチャンピオンであった人たちの回想録的な部分と、現チャンピオンのインタビューに答える構成が読んでいていい。 私は昭和38年からのボクシングファンであるが、かつて見たチャンプの中では「海老原博之」や「藤猛」などが印象にあるが特にすごかったと思うのが「大場政夫」だと思う。そういう過去の人たちに勝るとも劣らないのが今の日本のチャンプでは「西岡利晃」でありとてもよく頑張ったと思う。バンタム時代にはなかなかウイラポンに勝てずにもうだめだと思っていたら、再起してチャンプになった。彼とミニマム級の「井岡」に注目したい。そういった記事が満載の本である。どうぞ是非読んでみてください。
まずこの企画に拍手を送りたい。全国の辰吉ファンには一家に一枚のCDである。本人の試合での入場曲だからである。生きる伝説となりつつある(本人にはその気はないだろうが)辰吉丈一郎。まだまだ世界チャンピオンを諦めていない彼の今までの試合を振り返るメロディーでもあり、もう一度チャンピオンに返り咲くその日にも流れるであろうこの曲を聴きながら、その日を待とう。
この本を読んで、まるで仏教僧の話しを聞いているようで、自分がいかに無意味な所で悩んだり、立ち止まったり、自分で勝手につくりあげた ”常識” に捕われてジタバタしているのか、少し距離を置いて自分を見れた様な気がします。
彼の過去の著作、ドキュメンタリー映像や雑誌のインタビュー等、殆ど全てチェックしてきたので正直、内容に真新しいものはあまり期待はしていませんでしたが、知った内容なのに読んでいて何度もハッとさせられ、とても新鮮な気持ちで読み進める事が出来ました。
本書は彼のこれまでの著作の中で、最も優れた内容となっていると思います。
未だに現役続行を貫く彼の姿勢に、尊敬の心を持ちながらも、 ”どうして?” と理解に苦しむファンの方も少なくないと思います。
自分もそういったファンの内の一人と言えると思いますが、少なくともこの本を読んだ前と後とではずい分、その見方が変わった様に思います。
それは、賛成・反対 という図式において その比重が変わった と言う単純な意味でではなく、彼の考え方や生き方の知恵を聞く事で、大袈裟に言ってしまえば自分の人生観そのものが変化させられ、見えてくるものが違ってきた、と言う感じに近いと思います。
この本の中には、どんな人間にも共通する 普遍的なものが語られていて、それが読者に色々な物事について改めて考えさせる機会を持たせるのだと思います。
昔、松本人志さんが辰吉さんを評して、 ” 彼が本当にすごいのは、勝敗が絶対の基準を持つボクシングの世界において、タイトルマッチも勝敗も関係なく、
『辰吉の試合』と言う存在価値を成立させてしまった事だ。” といった事を言っていましたが、
辰吉さんは今度は(現在は)、 ”人間の生き方” という、もう少し大きめの目盛りにおいて、それと同じ様な事を(ボクシングを通して)しようとしているのではないかと、ふっ と思ったりしました。
変な言い方ですが・・。
この人は、本当はもっとずっと高く評価されていい人なのかも知れません。
最終的にはボクサーと言うカテゴリーを飛び越えて、もっと違う所で評価されていく人なのかな、と感じました。
器の大きさ、と言うか、ちょっと存在が違う様です。
彼が自分の人生の哲学を淡々と語っていく内容で構成された本書は、シンプルな言葉だけにスッと胸の奥に入って行き、それでも物事の核心に触れられた様で、ずしりと説得力の残る、深い内容の本になっていると思います。
この人はボクシングの才能なんて無かったとしてもきっと、何らかの形で一角の人になったのだろうな、と本書を読んで思う様になりました。
・・こういう人が、時々この世の中には現れるのですね。
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