本作を読んだ後、調べてみると、実在の軍人が何人も登場しており、 また発案者たちに至っては当時20歳そこそこで回天を発案、 上層部に嘆願しているという史実が極めて感慨深い。
現代人が描いているだけに、主人公の造形が極めて現代的な点は ちょっと気になるが、こうでもしないと感情移入がしにくいという 技術的な問題もあり、歴史物は難しい。
本巻は第一巻。若者たちの根源的な「生」への問いが、 執拗に読者にも問われる。それを単に上滑りとしか読めないか 真摯に受け止めるかによって大きく評価が分かれるだろう。
表紙に見えるのは菩薩様の表情にも似た特攻隊員。
彼らは死ぬことで、国に奉公するのではない。自分の信ずる者のために生を諦め、夢を託す。
潜水艦が敵の駆逐艦に補足されて、猛烈な爆雷攻撃を受けながらも、艦長は艦の乗員を守る方法を探り、回天乗組員は出撃を願い出る。
この艦長の「馬鹿者が」と言うセリフが無性に悲しい。
この星に生まれてきて、このような最期をなぜ彼らに選ばせてしまったのだろう?
そう、思ってらっしゃるようにも思えた。この人の表情は、「ブラックジャックによろしく」移植編で、年配の医師が未来を見つめて移植を支持する時の顔に似ていた。
そんな感慨を読むだけで浮かんでくる。作者は一度も、人物に言わせてもいないのにである。
戦争を始めた指導者たちは、威勢の良さ、成り行きで、ろくに未来を切り開く努力もしなかった。そのために、多くの人々が傷つき、死んでいった。
そのなかにおいて、せめて彼らが自分の意志をもっていたと信じたい。 読むべき本である。
海猿はきにいっている作品であり、期待には答えたが、主人公のせんざきの活躍が以前より減って 5つ星は付けられなかった。また、BLU-rayのみの発売で、再生の際、見る場所によっては、対応できない 機種もあったので、DVDの発売をしてほしかった。 また予約の際は、配達日の日にちが指定できなかったので、大変困った。
実母を殺し、「人を殺してみたかった」と言ってなんの関係もない人をもめった刺しにしてしまった犯人。「死刑でいいです」なんて、起こした事の重大さからみたら軽々しすぎる言葉を残し、極刑に処されたが、犯人はなぜ、こんな風に人間の心を失ってしまったのか。憤りを感じながら読み進めたが、一気に読み終わった後は、犯人に対する嫌悪感や理解不能な宇宙人を見るような感覚はなくなっていた。障害ゆえの生き難さや、幼少期に受けた暴力体験、経済的困窮等、ひとりの若者が背負うには過酷過ぎる環境の中で、もがき苦しみながら生きてきた犯人の姿が見えたからだと思う。
著者は、肉親、知人、教師、精神科医、保護司など犯人と関わりのあった多くの人々への取材を元に、事件の経緯とその背景を丁寧に描いている。犯人をことさら擁護するのでもなく、取材に応じてくれた様々な立場の人の目線から淡々と述べており、中立性が保たれる内容になっている。また、単に事件を伝えるだけでなく、どうしたらこのような悲劇が繰り返されずにすむかということについても触れ、発達障害者の支援者や当事者への取材も行いながら、社会全体で発達障害者を支えていく必要性を説いている。母親、隣人、教師、医療福祉関係者等、どんな立場の人が読んでも、身近にいる発達害者をもっと良く理解するにはどうしたらよいかを考えたり、もっと前向きに関わっていこうという気持ちにさせてくれる本だと思う。最後に取材拒否や記事に対する抗議など様々な困難を乗り越え、根気強く対話を重ね、出版に至った著者に敬意を表したい。
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