1952年にサンフランシスコ講和条約締結により主権を回復し、 GHQによる映画検閲が廃止されてから2年後の1954年はまさに日本映画にとって奇跡の年だった。 『ゴジラ』本多猪四郎『二十四の瞳』木下恵介『七人の侍』黒澤明、代表作だけとっても圧巻だが 例えば『ゴジラ』の場合国民の9人に一人が映画を見たというのだから、 その当時、映画が娯楽の頂点にあったのは間違いない。
最も才能のある人間が映画に関わっていた時代のチャンピオン作品(1954年度キネマ旬報ベストテン、第一位)がこれだ。
この映画は、小学生の時に、学校で上映された機会に鑑賞したが、古いフィルムで、途中で画面が揺れだしたり、 フィルムが切れたりして、何度か中断されながら最後まで映画が上映されたが、その時の感想は、よく覚えていない。 デジタルリマスター版が出ると知って、是非欲しいと思ったのだから、いい映画と感じたのは間違いないのだが、 なんとも記憶がはっきりせず、どこに感動したか確認したくて今回手に入れた。
まず画質だが。米国クライテリオンによる『ゴジラ』や『七人の侍』や『晩秋』のデジタル修復を見てしまうと、 正直、もう少し頑張ってもらえないかなという感じはある。 ただし、画像のフォーカスの甘さはなく、フィルムの汚れの除去等なかなか頑張っていて、 日本映画のレストレーションとしては及第点ではあろう。
音声については、かなり改善している。会話や映画で歌われる学校唱歌、また自然の音は、 美しく響いて来る。字幕なしでもきちんと会話が聞き取れるのだはないだろうか。
映画だが、反戦映画としてのあらすじのみ、当時理解していたのだが、今回視聴して 自然に対しての人の営みの小ささ、circle of life、生きる悲しさ、女性問題等々、 複数の視点が存在し、様々な問題をうったえかけており、 人により受け取るメッセージは様々だろう。
また、カメラワークが素晴らしく、全編がアートで、小豆島の風景を丁寧に映し出していて、 50年台の日本映画の凄さに圧巻された。
僕にとっては、自分の年齢もあるのだが、映画全編の構成が同窓会movieのところが 何ともツボに入った点だと思う。
全編から伝わる人を思いやる気持ち、人と人とを信じあう気持ちや、子供の頃の揺れる心理等、 すごくrealityがあり、一人一人の子供たちに印象的なエピソードが人事とは思えずに、 登場人物がすごく身近に感じられた。 高峰秀子の大石先生と子供たちの、交流の描き方もツボを得ていて、すごくよかった。
作品が丁寧に丁寧に作りこまれていることがわかり、繰り返して鑑賞するの十分耐える。
すでに、手に入れてから4回ほど見ており、一人ひとりの子供たちが愛おしくて、 何度も何度も見てしまう。素晴らしい映画である。
作品の感想自体はDVDの評価に様々な人がその良さを書き込んでいるのでそれを参考にして欲しいが、 特典では、映画監督・橋口亮介「二十四の瞳」をめぐる旅〜が素晴らしかった。 映画の舞台 小豆島に出向き撮影の現場を辿るが、大石先生と12人の子供たちが写真に写った、 まさにその方角にカメラが向かった瞬間、60年前の映画に写っていた山の端と現在の風景が完全に オーバーラップするのには感激した。
結局、手許においておきたいと思う映画作品には極稀にしか出会わないのだが、 この作品は、僕にとって間違いなく、ずっと手許においておきたい作品である。
これからどのくらいこの作品を見直すのだろう。まさに珠玉の作品である。
灯台守夫婦の半生を通じて、家族愛を描き切った素晴らしい作品だと思います。
是非一度(といわず何度でも)見てください。そして、今一度家族について考えてみたらいかがですか?
浜松で幼少期を過ごした木下。生家があった町内のありさま。彼が通った小学校の話など、著者が丹念に調べていることに敬服。私も知っている所なので、その正確さは保証出来ます。また今は大手になっている会社の創業時の話しなども面白く読みました。
撮影所に入ってからの話は、彼の作品にピッタリ寄り添いながらも、著者の意識が向かう方向に自由に話が伸びる面白さがあります。映画の画面が一瞬で展開するように話題は自由に変わります。しかし撮影のカメラと同様、対象への焦点は、ぶれていません。視点が常に一定の情念に包まれています。木下が死ぬまで、全創作活動のデイテールだけでなく、実生活も書かれています。著者が暖かい眼で木下を見ていることが痛いほど判ります。
正確な伝記として読むよりは、木下の一生にまつわる事柄を材料とした著者の創作として読んだ方が、楽しく読めます。この本を脚本化すれば、木下の伝記映画が撮れそうです。
著者ならずとも年配者は、木下映画への時代の評価が不当だなと感ずるのではないでしょうか。彼が大事にした普通の日本人が持っていた筈の、人を信頼する価値観が変わってしまったのか。あるいはパリで近代映画を知った木下の芸術の中味が、置かれた時代への直線的な反応に過ぎず、時代を超えた美の理念の領域まで踏み越んでいないからか。それは後の時代が、日本人の価値観そのものと共に、評価することになると思います。
本書を読むと、鑑賞者の眼は、スクリーンの外にまで拡がります。その眼で木下作品を見ると、また一段と違う感動を得ることが出来そうです。
大騒動引き起こすものの 結局みんなが幸せに・・・・ 好きです、この作品。
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