ちょっと信じられないストーリー展開で、ばかばかしいと思いながらも見ている人をグイグイと引き込みます。 思わず、石田ゆり子扮する主人公に「もっと、生きていて欲しい!」 と叫んでしまいます。 心の底からわき上がってくる感動と涙。 素晴らしい演技を見せる知的障害の少女役。 元ピアニスト役の吉岡秀隆が奏でるベートーベン・ピアノソナタ「月光」は、見る人の心に染みいるように響きます。 そして、何よりも監督自身のこの作品に対する深い思い入れが、さらに素晴らしい作品に仕上げているようです。 日本映画って良いもんだなぁ、としみじみと思います。
源平の時代に若者をタイムスリップさせる着想はどこから生まれたのだろう。常識を打ち破る為に必要なことは異界から持ち込む。なるほど、40歳まで際だったエピソードのない北条義時が、資本主義や象徴天皇思想を知る現代の若者だったら・・・後の承久の乱も頷ける。実に良く練り上げられたプロットだ。遠藤盛遠の逸話を巧く取り入れている所も納得であり、義経と弁慶の冷めた友情、義仲と巴の行はもう涙涙。古典文学の最高峰である平家物語を良くぞ此処まで解釈したものだと感服させられました。歴史小説だけどファンタジー、必読の一冊です。
読まないほうがいいかも。特に後半、切なくてたまらなかった。歴史が、時が、どこに向かって流れていこうとしているのか、わかっているのにそれをどうすることもできないもどかしさ悔しさ。精一杯今を生きることしか道は残されていない。電車の中で読んでいて何度も泣きそうになって困りました。ただのタイムスリップものとは違って、歴史小説としてもたっぷり楽しめました。
なんとなく題名が目に入ったので買ってみた作品。 このミステリーがすごい!の大賞を受賞した作品と書かれていたが、あんまり詳しいことはわからずに読みました。 読み始めて数分で、自分でもビックリするほどあっさりと物語に引き込まれていきました。 序盤はゆったりとした、それでいて綺麗で違和感の無い描写に見せられ、後半にかけては一気に物語が進行を開始します。 その引き込まれる様は心地よい感じさえ抱かされました。 後半からの展開はミステリーというより、ファンタジーというのが正しいのかもしれません。 しかし、人の脳の不思議や、死の概念についてなどあえて世の中の「不思議」に挑戦したのはとても面白かったです。 読んで損は無い作品だと思います。
23ヶ月くらい前に一度単行本のほうでレビュー書きました。
それから実に10回以上は読み直し、言い回しのひとつひとつまでほとんど
覚えてしまったくらいにこの本のファンになってます。
歴史物&タイムスリップという小さな括りではこの本の味を語りつくせません。
自分でもなぜ、こんなに何度も読みたくなるのか、何に惹かれるのか
・・・それが徐々に自分なりに理解できたことがありました。
これは一言でいうと物理的な身体の生死という枠組みを越えた
愛の物語であって、つまりは魂の物語なのではないか、と。
主人公である巴、そして義仲や武蔵との深い結びつき、時の代理人とも
いえる阿修羅その後覚明、時の使者となる四郎つまり後の北条義時・・
こういう独自の構想によって、下巻の裏表紙にもあるように
「平家物語」を慟哭のロマンスへ変えていると感じます。
長野県木曾郡日義村に「義仲館」というのがあるのを知り、矢も盾もたまらず
かけつけました。
歴史として残されている展示物を、この本に出てくる巴や義仲を思い浮かべ
ながら食い入るように眺めました。
最初に読んでから、今に至るまで感動が衰えません。
深読みすると著者の筆力がいかにすごいか、それを支える構想がいかに緻密に
ドラマチックに考えられているか今更ながら驚かされます。
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