最近の住宅は便利な収納が壁に付き、突起が少ないスクエアな部屋の作りになっているが、それは部屋自体が狭いからに他ならない。「家具」を置くことのできるスペースや生活空間があることはこの上ない贅沢だとおもう。そしてその家具だが、現在の日本では佇まいが誇らしそうな家具類は姿を消してしまった。それは大量生産がもたらした負の部分だろう。 本書の主役である「山本商店」は生活骨董(和家具)に重点を置き、仕入れ、リストア、販売までを手がけているアンティークショップだ。 本書でも何点か紹介されているが、もう手に入らない手業の和家具はある意味一点ものである。 是非訪れてみたいお店である。おっとこれは本のレビューだったな。
決して悪い本ではないのだが、新書のページ数を考えると対象範囲を広げすぎで、そのためすべての章において深みを欠いている。表面的にデータを網羅しただけに見えなくもない。余計なエピソードの紹介も多く、社会全体の中における俸給生活者の位置付けを考究しようとしているのか、それとも俸給生活者に軸足を置いて世相全体を見渡そうとしているのか、あるいは学生も含めた中産階級(の祖形)の意識を探ろうとしているのか、それらの間にブレがあって著者の意図がよくわからない。読み進めていくうちに、だんだんテーマがずれていくような気がする。終章の主張は、それ自体は理解できるが、本書のテーマと論の進め方から見ると突飛というか、蛇足の感が強い。
どうせなら、タイトルが『「月給百円」サラリーマン』なのだから、俸給生活者に絞って論を深めた方がよかった。
すでに昭和戦前期の社会風俗に関心を持って追っている人にとっては、読んで当り前の本を多く参考にしているので新たに得られる知見は少ない。また、参考文献の中に、いささか疑問符の付く著作が含まれているのも残念。そのくせ、読むべき先行研究を外しているのは気になる。たとえばこの種の本としては一度は参照するであろう今和次郎の『新版大東京案内』を見ていないようだが(参考文献として挙げられていない)、都市生活者の経済を追う本として如何なものか。
厳しいことを書き連ねたが、この時代の都市生活者の風俗を書いた本としては、さしあたって今読める本としては手頃。そういう意味では、昭和戦前期の都市風俗に関心を持つという人には悪くないだろう。
住宅の歴史。 古い住宅で思い出すのは、戸建て借家に住んでいた頃。 京都の借家は戦前の家だった。トイレが「厠」と言わんばかりに木の床の廊下を歩いた 北面の端にあった。畳はいわゆる「京間」。玄関の脇にある沈丁花の花が今も記憶に残る。
最近はフラットなモダンデザインだったり、派手な塗り壁の輸入住宅だったり、古民家風の 平屋があったり、新築住宅のデザインはほんとにバラバラ。
ハウスメーカーや工務店の家はともかく、建築家はどう考えていたのか、そんなことがこの 本を読みながら、おぼろげながらわかってくる。
それにしても、大正の家でも見た目は決して古さを感じさせない。 「使用人室」など、間取りは時代を感じさせるが。
今の平らな陸屋根のモダン住宅も、元をたどれば30年代の住宅に行き着くのかな〜とか、読 んでいるとイマジネーションが広がる。 戦後の家でも、VAN創始者・石津氏の家は間取りがおもしろかった。 3畳ぐらいのオープンな子供部屋が並んでいるのは、最近の「子供が部屋にこもらないように」 という間取りスタイルに似ている。
いつまでも古さを感じさせない家を自分が建てられるかどうかはわからないが、本を読みな がら家づくりについて深く考えたいと思った。
一つだけ残念なこと。 写真が全て白黒のこと。藤森氏が文章で色も含めて解説しても、読者は目で確かめることが できない。初出が古い本なので仕方ないのかもしれないが、この手の本はカラー写真を入れ てほしい。
私は住宅関係の仕事をしているものですが,とても参考になりました。
世間にたくさんある不動産関係の参考書はたいてい、いかに売ろうかという下心みえみえの内容や、業界のひも付きの内容が多いですが、そういうものとはぜんぜん違います。著者の山下さんの独自の造語がうまいなと思います。未来拘束装置とか昭和妻とか。
今までとは違ったコンセプトの団地写真集です。活気に満ち溢れていた頃の貴重な写真が使われています。
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