不思議な能力を持った常野の人々にまつわる連作短編集。とはいっても、一話一話に終わりはなく、次を感じさせる構成になっています。何でも記憶できる春田一家、先のことが分かる美那子、200年も校長をやっているツル先生、自分の”飛ぶ”力を思い出した亜希子、裏返すか裏返されるかの戦いを続ける瑛子。これら、常野一族の能力はなんのためにあるのか。これから彼らはどう生きていくのか。話はどんどん広がりそうで、この先ずっとシリーズ化してほしいなあと思うような作品でした。
タイトルにもなっている「光の帝国」の章では、悲しい出来事に思わず涙ぐんでしまいましたが、最後の「国道を降りて・・・」は、常に在野にあれとあちこちに散らばっていった常野の人々が、これから徐々に居場所を求めて集結しそうな気配を感じさせるとともに、過去と現在がつながる不思議な因縁に少し心があたたまりました。最後は清々しい終わり方で、私まで心穏やかな常野の人々とふれあったような不思議な感覚が残りました。
恩田陸の作品は、いつもジャンル分けができないなあと思いますが、これもそうですね。ファンタジーという一言ではくくれない、奥の深い作品なんです。何度も読み返したくなる、ステキな作品でした。