この本はプルトニウムの問題を扱っていますが、原子力発電とその危険性を知る上でも一番手軽で一番分かりやすいと思います。原子炉の原理と構造、メルトダウンとは何か、水素爆発の原因は何か。書名から連想する以上に多くの人が知りたいことに答えてくれます。本題のプルトニウムについては以下の通りです。カッコ内に註釈を入れました。
・プルトニウムは人類が人工的に作り出した。原子炉の中で作られ、化学的な毒性も、核分裂のし易さの点でも放射能の強さの点でも、非常に恐ろしい物質だ。原子力発電所そのものも危険だが、廃棄物の処理は更に何倍も危険だ。
・プルトニウムを積極的に作るために高速増殖炉の「もんじゅ」があるが、軽水炉に比べ中性子の制御が難しい。即発中性子の寿命が短い。遅発中性子の割合も少ない。高速中性子で起こるステンレス鋼(オーステナイトと呼ばれるFCC結晶の場合)のスエリング(微小な空洞がたくさん出来て材料が膨張する)が被覆材を変形させ燃料を圧縮し反応を加速させる。いずれも揺らぎを増加させる正のフィードバックを起こす原因になる。炉心の熔融があったときプルトニウムは臨界に達しやすい。
人類が作り出しながら、人間の手に負えない厄介な物質がプルトニウムであることを、この本は私たちに教えてくれます。まさにプルトニウムは恐怖の元素です。実は福島第一原発の三号炉でもプルトニウムを混ぜた燃料を用いていました。この本が警告していたプルサーマル(MOX燃料)の計画が進められていたのです。それが飛散してしまいました。
著者の高木仁三郎さんは大学で化学を学んだ後、日本原子力事業NAIG総研という東芝系の会社に入社しました(高木仁三郎著『原発事故はなぜくりかえすのか』)。当時は日本の原子力産業の黎明期で、みな原子力という新しい技術に希望を抱いていたことと思います。ですが、原子炉からの放射性物質の漏洩を真面目に測定して学会等で発表したことで居辛い雰囲気になり、その後は大学の教員を経て、原子力資料情報室を設立し脱原発を主張し続けてきました。日本の脱原発の象徴とも言える人です。
この本は1981年に書かれました。その後責任が不在のまま、再処理計画は着々と進んでいます。更に新しく詳しい情報を知るには、同じ著者の『核燃料サイクル施設批判』をお勧めします。厚いが読み応えのある本です。ですが、この本も非常に広範囲の内容をぎゅっと圧縮した密度の高い一冊です。
原子力発電所は、核兵器のために、多量のプルトニウムを製造するために必要だったことが、この本を読んではじめて分かりました。
噂のように言われていた、ABCCの放射能の影響の観察実験のことも、原子力安全委員会の発足から今に至ることがよく理解できました。
注目したいのは、米国では1993年頃からクリントン大統領の指揮の下、核産業(兵器、エネルギー、医療を含む業界)のこうした実態が公になり裁判まで行われるようになったのに、日本にはこのことを政府もマスコミも報道せず、だまっていたことが恐ろしいです。
息子のクリスマスプレゼントにしました。喜んでくれたので良かったです。
プルトニウムについての、最高の入門書である。プルトニウムの基礎的知識から、原爆、原子力発電、核燃料サイクル、等についての、著者の説明と記述に、夢中にさせられた。著者の説明は、実に秀逸で、原爆開発を巡る逸話、技術的視点から見た核拡散防止の難しさ、アメリカのプルトニウム政策の変遷、などについての著者の説明、記述は、理科系と文科系の双方の視点を持ち合わせた、この著者ならではの物と成って居る。プルトニウムについて、いかなる意見を述べるにも、先ず、この本を読んでから述べる方が、賢明であると、私は、思ふ。
(西岡昌紀・内科医/長崎に原爆が投下された日から60年目の日に)
98年の10月〜12月クールで丁度10年経つけど今見ても良いものです!! 当時リアルタイムで見てた自分は正直はまりました。まだこの時のCセンも若いです!!
DVD化されるのを期待してます。
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