この本との出会いは、いつか、結婚してたくさんの子供に囲まれて、自給自足に近い生活をしたいと願う私に、おばが読んでみなさいと勧めてくれたことがきっかけでした。 この本が私にとって大切な一冊となったのは、 古き良き生活の一場面一場面がたくさん登場するということでしょう。 朝、台所から漂う、ご飯が炊けるいい香り。 「みようがの葉をとっておいで」の合図ではじまる小麦まんじゅう作り。 子供達だけで七輪を囲んで作ったホットケーキ。 霜が下りたら甘くなる白菜を、手の切れるような冷水で洗い、漬込んだ「白菜の漬け物」。 私もその場に行って、一緒に食卓を囲みたいと何度願ったことか。 食事だけではありません。 子供達の服も縫ったり、冬場のコートだって編んでしまう。 !母の手から生み出されることがどれほど生活を豊かにしていることでしょうか。 人の知恵が生活の中に生きていた時代。 物は豊富とは言えなくても、それを補う何かが存在していた。 今は失われつつあるその何か大切なものを教えてくれるのです。 私にこの本を勧めてくれたおばにとっては、ひょっとすると、子供を育て、時給自足に近い生活をすることは、そんなに甘いものではないことを教えようと思って私に勧めたのかもしれません。 でも、私にとっては、とても大切な一冊となっています。 それほどまでに、この本に描かれている日常生活の何気ないシーンが私にとっては魅力的に映ったのです。
歴史小説としても読み応えがあります。
時代は大正。日本の帝国主義が徐々に加速されていった頃。
大阪で起こった米騒動の息詰る描写には迫力があり、思わず引き込まれました。
歴史の教科書では1ページにも満たない部分ですが、その当時、庶民はどんなことを感じ。考えていたのかがよくわかります。
その時代に生きた歴史の証人の声を聴く機会が減りつつある今、
テーマである「差別」の様相を知るとともに、日本の歴史がどう動いたのかということを目の当たりにするようでとても興味深く読むことが出来ました。
時の権力者や著名人の生き様を描いた歴史小説は多々ありますが、市井の人々がどんなふうにこの時代を生きたかを描いている本書は大変貴重だと思います。
この映画は上映を企画すると必ず上映阻止行動に出るグループがいて、なかなか上映の機会のない映画でした。したがってビデオソフトになることはまずないだろうと思っていたら、何と2部作全部DVDになり驚くのと同時にありがたいと思いました。
差別を助長するという人がいますが、それほどではないと私は思います。例によってちょっと突き放したような描き方はこの監督独自のもので、この映画だけのものではないからです。
被差別部落問題を取り上げた有名な本です。
被差別部落の地域は、自分自身が産まれていない時代、場所はこんな状況であり、こんな心づもりで生活していたのだ。と知らされる内容です。
この小説を読む以前に、被差別部落に生まれたルポライターの部落問題の本(差別された経験は特に無いという人)を読み、最初から重い気持ちで読むのは止めようと思っていました。
この本のように、被差別部落の人は辛い経験をするのだろうという印象は持っていたし、時代背景も違う二つの本だけれども、この本だけ読んで一方通行の考え方に偏りたくなかったので。
主要登場人物達の気持ちよい性格、痒い所まで届く住井さんの文章(この人はこう思っているはずだ、こう思ってほしいと考えている脇役の登場人物たちの台詞もきちんと書いてくれている)は読んでいて本当に嬉しくなります。
本自体の部数も多いですが、次が気になりどんどん読み進んでしまいますよ。
とにかく著者の知識の情報量、筆の運びなどにぐんぐん心を引っ張られました。
登場人物が多いので、すぐどんな人物かと思い浮かべたいと思ったら、人物関係図をメモしておくと便利。
貧しいけれど、純粋に、正直に力を合わせて生きる兄弟を童話のようなタッチで描かれています。様々な困難が待ちうけていていて、どんどんストーリーに引き寄せられます。エンディングは涙なしでは読めませんでした。労働の尊さが、知らず知らずに心に響き、自分も頑張ろうと励まされます。読んだ後、心地よさが残りました。是非、皆さんも読んでみてください。
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